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目薬  作者: 青山えむ
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第1話 目薬

 近頃、幻覚を見る。


 この前の休日、私はオシャレな眼鏡を探していた。

 私は普段コンタクトレンズをつけているのでファッション眼鏡を、度が入っていない眼鏡を探していた。

 

 オシャレな物を探す時、私はⅮ通りに来てしまう。デパートや昔からのお店が立ち並ぶ商店街。私はこの、Ⅾ通りの空気が好きだ。

 ここⅮ通りは一方通行で路駐が多い。狭い立体駐車場ばかりで駐車料金も高い。

 少し遠いけれども、私は一番駐車料金が安い駐車場に車を停める。そこから道路を渡り、一方通行のⅮ通りに入る。車だけが一方通行なので歩行者は気楽なものだった。


 昔からの薬局、古本屋、喫茶店、花屋、惣菜が売ってある青果店。閉店してしまったゲームセンターに美容室。新しく出来たコンビニ。

 昔に比べてお店は少しずつ変わっているのだけれども、景色というか空気は変わらなかった。

 田舎は車社会で、デパートに車を停めて、そのままデパートで買い物も食事も済ませる。ほとんどがそうだった。


 けれどもこのⅮ通りはそうはいかない。小さいお店がたくさん並んでいて、各店に駐車場はない。歩行者になったほうが楽なのだ。散歩がてらに景色と季節を味わうのはとても良い。


 今日は少し暑い。もう初夏だ。半袖でも少し汗ばむけれど、クーラーの効いている店内は冷えるだろう。私はカバンにストールを常備している。

 帽子がたくさん売っている店やコーヒー豆を売っている店を通りすぎると広場がある。椅子や、小さいステージがある。親子で散歩している人やスケボーを持って集まっている人、ダンスの練習をしている人がいる。


 一番大きなデパートまで来た。いつもはこのデパートに行くのだが、今日はそんな気分じゃなかった。もう少し歩いてみよう、そう思ってデパートを超えると眼鏡屋があった。ああ、そういえばあったな。チェーン店の〇〇眼鏡。


「いらっしゃいませ」

 店員が大きな声で叫ぶ。店内は少し涼しい。


「何かお探しでしょうか」

 声をかけてきた店員は、顔のサイズに対して少し大きいと思われる眼鏡をかけていた。レンズと顔に凹凸がなかった。度が入っていない。売り物の眼鏡をアピールするためにかけているのだと思った。


「オシャレな眼鏡が欲しくて」

 私はそのまま答えた。よく見るとその店員は、可愛い顔立ちをしていた。接客業にぴったりだと思った。


「ごゆっくりお選びください。何かありましたらいつでもお申しつけください」

 可愛い店員は笑顔で立ち去る。



 眼鏡フレームは、メンズとレディース、キッズなどに分かれていた。

 私はレディースと書かれたコーナーを端から見る。

 気になるフレームを直接かけてみた。形が気に入っても色が気に入らなかったり、その逆もあった。形も色も気に入っても自分には似合わない物もある。


 うーん、気に入る物は見つからない。今日はやめておこう。一応、見逃したフレームがないか店内を見渡した。

 レジ付近に置かれてある、珍しい形の物が目を引いた。ポップにはコンタクトレンズ装着液&目薬と書かれている。装着液か、前使ってたなー。


 それはフタがうずまき状のデザインになっていた。本体部分には目のイラストが描かれてあった。ピンク色をしている。可愛い。


「この装着液、可愛いですね」

 私は先ほどの店員に話しかけた。


「可愛いですよね、最近発売されたんですよ」

「聞いたことないメーカーだけど……評判とかどうですか?」

 聞いたことのないメーカーの目薬だったので、情報が欲しかった。


「こちらのメーカーは普段、コンタクトレンズのケア用品を販売している会社です。目薬としてはメジャーじゃないですけれども、業界では名の知れたメーカーなので安心ですよ」

 可愛い店員は、そのメーカーのケア用品を見せてくれた。確かに、同じ会社名が書いてある。コンタクト業界の商品なら大丈夫か。しかも結構お安い。そんな感じで、この装着液兼目薬を買った。


   〇〇〇


 月曜日の朝は、昨日が少し残っている。それでも仕事に行くために気持ちを切り替える。冷水で顔を洗う。さっぱりする。

 コンタクトレンズの内側に、昨日買った装着液を一滴たらす。

 スッと、目に引き寄せられるように、スムーズにレンズが装着された。潤いも感じる。目に馴染ませるために、数回まばたきをする。


 映像が見えた。山口(やまぐち)くんと私が、近距離で話す映像だった。

 山口くんは職場の同僚で、私は密かに想いを寄せている。映像が消える。

 えっ。今のは……夢? 寝ぼけてた? どうなんだろう。目が覚めた。私の妄想だったのかな。


 いや、いやいやいやいやいや。念ために香水をふってみた。そうだ、山口くんと近距離で話すことだって、なくはない。


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