キオクソウシツ?2
誰も居なくなった部屋に、動けない私が1人で横たわっている。
目を閉じても先ほどまで居た女の人声がずっと耳の奥に残っている気がした。
お願い…その音を消して…
お願い…もうやめて…
耳を塞いでも、目を閉じても
無駄だとは解っていても、そうして居た。
そうして居てからどの程度経ったのだろう。
ふと、視線を窓の方に移す。
オレンジ色の灯りが、白いカーテンを照らしている。
今は夕方なのか。
そう思うと同時に
部屋の扉を、恐る恐るノックする音がした。
「は…い……」
震える声でそう答えると
勢いよく扉が開いて、誰かが駆け込んできた。
フワフワフリフリした
薄いピンク色の服、ヘッドドレスをつけた可愛らしい…
でも、さっき来た高校生よりは少し大人っぽい感じのする女の人が
目を開けている私を見て、涙を浮かべながら
抱きついてきた。
「琴音ちゃん…良かった、目が覚めたのね…」
可愛らしい声、花の様な匂いが私を包む。
私の体は緊張で強張る。
「あ、ごめんね…怪我してるのに抱き着いたりして」
「あの…」
本当はこんなこと言うのは失礼になるかもしれない。
でも、伝えておかなければいけない気がする。
「貴女は誰…ですか」
彼女はショックを受けたように、私から離れる。
「え…何で」
「すみません…私…自分が誰なのかも覚えていなくて」
彼女は一瞬安心した表情を浮かべてから
悲しそうな表情を浮かべて
「私は…霧島 さくら。琴音ちゃんの友人だよ。琴音ちゃんって言うのは、貴女の事。」
「ことね…」
自分の名前を聞いても、なんだかしっくり来なかった。
「霧島さんは」
「名前で呼んで欲しいな。琴音ちゃんが記憶なくても、苗字呼びなんて何か寂しいもの」
「じゃあ…さくらさん」
「呼び捨てがいいんだけど…」
「ごめんなさい…慣れるまでは」
「そ…そうよね。無理強いはしたくないもの。」
さくらさんは、優しく微笑んだ。
「あ、ごめんなさい。何か言いかけてたけれど…何かしら?」
「あ…ええと…此処は何処ですか」
他に訊こうと思った事があったけれど、なんとなくそれを訊くのは違う気がして
別の事を訊いた。
「此処は病院。琴音ちゃん怪我をしたの。」
病院…怪我…
ああ、だからこの部屋の全てが白くて、私は傷だらけなんだ。
「あの…さくらさん、私の事を教えてくれませんか」
そう言ったら、さくらさんは一瞬、表情を強張らせた。
「あ…ええと…な…何から教えればいいのかしら…。」
明らかに困らせている。
そんな自分がとても、惨めに感じた。
「名前は、椎名 琴音ちゃん。高校二年生。」
しいな…ことね…
「高校って事は、さっき来ていた人達はクラスメイト…」
小声で呟くと
さくらさんの声色が変わった。
「さっきまで誰か来てたの?」
「え」
「誰か…来てたの」
「あ…男の子2人と、女の子3人…」
「ふうん…あの子達…来てたんだ。」
「知ってるんですか?」
「あ、多分。」
さくらさんの声色が戻った。
「私が知ってる人ならね。」