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短編の標本箱  作者: 夏野篠虫
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潔癖すぎる管理人

 出先で昼飯を食べた後、俺は突発的に腹痛に襲われた。

 次の取引先に行くまでまだ時間はあるが、このままでは仕事どころではない。とにかくトイレに行かないことには…!


 慣れない町を彷徨っていたら、小さな公園を見つけた。遊具もろくにないような所だったが幸い公衆トイレが建っていた。


 助かったぁ……。

頭の中は胃腸の痛みとトイレ発見による安堵感に占領された。刺激しないようギリギリの小走りでトイレに向かった。



 近寄って気付いたが、普通の公衆トイレに比べて外観がやけに綺麗に感じた。外にある割にまるで雨風や鳥の糞に避けられているかのようだ。


 というか外壁に『このトイレはキレイ』って書かれた看板が付いていた。なにやら看板の『イ』の字の後ろは割れてしまったのかギザギザの断面が露出していた。


――いやいやそんなことはどうでも良い!はやく、はやく中に入らねば!


何故か入口に扉があったので、俺は面倒に思いながら勢いよく開けた。


 中は洗面台から小便器、天井から床まで一面純白の世界が広がっていた。利用者マナーが良いのか、よほど清掃を念入りにしているのだろうか。しかし窓のない白い空間はちょっと非日常さを感じる。


「おぉ…」予想外の光景に自然と感嘆がこぼれた。

なんだろう、ここまで綺麗だと使うのがもったいないというか落ち着かないというか……。



んんん?

いや、トイレはそもそも汚れる所なんだ!見た目なんか関係ない!俺は用を済ますために来てるんだよ!!

自分の心にツッコミを入れてたら、まざまざと痛みが蘇ってきた。


俺は一番手前にある個室の扉に手を掛けた。そして鍵を閉め、ベルトを素早く外してズボンを降ろした。




――――7分後。個室から出た俺は、鏡を見ずとも穏やかな表情をしているのが自覚できた。


腕時計を確認。時間は…まだ大丈夫。

あの苦痛と不快感あら解放されて、いつもより仕事ができそうな気さえする。



 陽気なテンションに包まれながら洗面台へ。

液体石鹸ムースにちょうど良い温水。ちゃちゃっと手を洗う。鏡で髪もチェック。

よっし問題なし。


はぁー、どうなるかと思ったけど焦る必要はなかったな。

両手をズボンの腰元で拭いながらそう思った。


心に余裕もできたしゆっくり向かおう。出入口のドアノブを横に引いた。

 

ガッ。


んあ?

もう一度。


ガッ、ガッ、ガンッ。


何度やっても開かない。


 おかしい。外も内も鍵なんかどこにも無いはずなのに、絶対鍵が掛かっている!?

全体重を利用してもびくともしないドア。窓も無いこの部屋に閉じ込められてしまった。


「おい誰か-!!助けてくれ!!」

叫びながらドンドンドンとドアを叩くが反応は無い。


どうなってんだ!!

誰がこんなことを、いったい俺がなにをやったって、いう、んだ?……。



怒りが溢れて目線を落としたら、その先の床に文字の書かれた板きれが落ちていた。


嫌な感じがして、その板を拾った。書かれていたのは


『好き専用につき、違反者は罰則あり』だった。


これ、外に書いてあった……?



「あ、」


頭の中で全部繋がった。

閉じ込められた理由は単純だった。



俺がさっき、濡れた手をズボンで拭いたからだ。



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