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短編の標本箱  作者: 夏野篠虫
4/7

リミット!

 永い時間、人類が訪れることがなかった島がある。



訪れることができなかったという方が正しいかもしれない。


 


理由は様々、荒れた海や立ちはだかる岩礁、危険な生物の存在、そして何より常に煙を吐き出す活火山が、発見から数千年もの間人の侵入を拒み続けた。



 そのおかげで島は原初から続く生まれたままの自然を維持でき、固有の生態系が構築されている。




 そんな未知の土地に、いよいよ本格的な調査が始まった。



 この日、歴史上初めて島に降り立つのは事前の調査に来た教授と助手の2人だった。彼らの簡易的な調査の後、その他の専門家らと計画を立てて本調査を行う。




「あれが私達が人類初の上陸者となる『拒人島』か」



「険しい火山ですね、先生」


"人を拒む島"で"きょじんじま"という名前。いつの頃からか、気づけばそう呼ばれていた。



 

 荒れた海を最新の小型船でくぐり抜け、唯一の浜辺に乗り上げて上陸。



翌日の夕方に再び迎えの船が来る。それまでここには2人だけだ。




「早速下見を始めよう。今日明日の天候に問題は無さそうだ。浜辺でキャンプをしよう」


「わかりました。ではテントを立てますか」




 手早く調査拠点を設営し、まずは周囲の地形、環境を記録していく。



 浜辺の手前は切り立つ岩壁。両側は草と木が生い茂り、原始の自然が残されている。




 2人は興奮気味に未知の動植物を観察していく。

そんな中、助手が教授を呼ぶ声がした。




「先生これは何でしょうか」



「む、花だな。一見ハイビスカスのようだが……初めて見る形態だ」




 


 2人の目の前には満開の花が咲き誇っていた。



大きな花弁に派手な色彩。熱帯地域でよく見られ観葉植物としても人気があるハイビスカスとそっくりだ。


 ただ1つだけ、異なる特徴があった。




「雌しべと雄しべだろうか。まるで時計の長身と短針のように、中心から花弁に沿うように生えているぞ」



「すごい、花の時計みたいですね」



「確かにそうだ。……それによく見ると花弁に小さな等間隔の溝がある。上下左右には大きな溝……数えると60ピッタリだ」




 助手の言葉通り、大きな花弁を文字盤、雌しべと雄しべを長針と短針とするなら見た目は完全な時計だ。




「明らかに新種だ。でかしたぞ助手君」



「いえいえ、そんな。先生のおかげですよ」



「では1つ採取していこう。……ん?」




 教授が花の茎に手を伸ばした途端、花の針が急速に動いた。



初めて見た時は1時くらいの位置にあった針が、3時まで回ったのだ。



「本物の時計のような動きをしたぞ。どういう反応だろうか」



「先生、周りを見てください」




 助手に促され辺りを見渡すと、他の花も同じ位置まで針が動いている。



「全ての動きが連動しているとしたら……よし」




 教授は推測を確信に変えるため、今度こそ花を1つ摘み取った。





 瞬間、手の中の花は目にも止まらぬ早さで1周して、鮮やかな赤から腐敗した黒になって崩れ去った。と同時に周囲の花はぐるぐるっと時針を回しておよそ5時を指した。




「先生!これは一体!?」



「花を摘んだら先程よりも針が進んだ。つまり花に何かしら危害が加わると針が進むのだろう」



「なるほど、そんな植物が存在するとは。じゃあ、もしも全ての花の針が12時まで進んだとしたら――」



「この花は絶滅するのかもしれないな」




 世にも奇妙な植物だ。そこが生物の面白いところではあるが。




「今日は休もう」




 本土の研究班に報告をした後、テントに入って眠りについた。



 翌朝、2人はもう一度あの花を確認することにした。

何かしらの変化があるのではと、期待と不安半々で見に行くと――




「少し針が戻っているな。危機が減ったというわけか」



「ええ、そのようですね」




 少し安堵した。詳しい調査は後日、本隊と行なうことにしよう。




 直後に地面が揺れた。小さい地震のようだった。



 揺れはすぐに収まったため、2人も大して気にとめなかったが、顔を上げると何故か全ての花の針は12時を指していた。




「どういうことだ!何が起きたというのだ!?」





 予測できない自体に慌てる教授と助手。






 やがて、2人の頭上へ轟音と共に噴石と溶岩が降ってきた。



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