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4.ある女官の日記

○月△日

 勇者様が建国した国の王宮で、女官として働く事になった。


○月▽日

 魔王によって滅ぼされた直後の私の故郷で、私を含む生き残りの女性達の尊厳を汚した男達を王宮で見かけた。

 調べた所、魔王と倒す為に旅をしていた勇者様に重用されて、その流れでこの国の将軍として雇用されたらしい。

 きっと、勇者様は知らないのだろう。


○月◇日

 勇者様とその婚約者の五人の王女様達、そして、あの男達が酒宴を開いていた。

 聞き耳を立てていると、話の流れであいつ等があの時の事を口にした。

 勇者様達との会話から、勇者様達が以前から知って居た事が解った。

 立派に更生しただとか、魔王討伐に協力した事で償っただとか言って居た気がするが、気付いたら自室に戻っていた。

 裏切られた気分だ。勝手に理想化していただけなのだが。


○月□日

 一晩中辞めるべきかを考えて、辞めずに復讐しようという結論を得た。

 でも、何をどうやれば良いのだろう?


○月×日

 東の国の王女が到着したらしい。

 これで、ユーキの婚約者が全員揃った。

 この御方は、あいつ等の蛮行を知った時、どう思われるのだろうか?

 確認する術は無い。


○月○日

 後宮への異動を命じられた。

 後宮勤務となれば、復讐の機会はいくらでもあるだろう。

 少なくとも、他よりは。

 でも、あいつ等への復讐は難しくなる。

 元から、将軍と接する機会などそうは無いが。


△月▲日

 今日はユーキ等の結婚式前日。

 仕事の打ち合わせの為に離宮に行ったら、五人の王女が東の国の王女を囲んで責め立てていた。

 ユーキを愛していないのが気に入らないとか、勝手な事を言っていた。


 打ち合わせの帰り、東の国の王女の花嫁衣装が置かれた部屋の前を通ったら、警備の衛兵が居なかった。

 鍵も掛って居なかった。

 不審に思って覗いてみるが、特に異変は無かった。


 私は、つい、魔が差して、護身用に所持していたナイフで花嫁衣装をズタズタにしてしまった。

 東の国の王女には恨みは無いのに。

 ユーキの婚約者には違いが無いから、あんな事をしてしまったのだろう。


 それにしても、衛兵は何故居なかったのだろう?

 反勇者派を嵌める為の罠?

 それにしては、私を現行犯で捕まえなかったのが不思議だ。


△月▼日

 今日はユーキ等の結婚式当日。

 東の国の王女が、式に出られずに国に帰ってしまった。

 私の所為で。

 まだ、あいつ等に復讐していないのに捕まってしまうのかと思って後悔していたが、ユーキは犯人捜しを命じなかったようだった。

 文官は慌ただしく動いていたが、武官に動きは見られなかった。

 ユーキは後宮で新婚初夜を過ごしている。

 私を油断させる為の芝居だろうか?


△月◆日

 未だに私は逮捕されていない。

 ユーキ等の会話を耳にするに、東の国の王女の自作自演だと思っているらしい。

 私は、妊婦に良く無いと聞いたラベンダーやローズ・アニスやセージ・ジャスミンやクローブ等のオイルでのマッサージを王妃達に施している。

 また、王妃達は此方が勧めるまでも無く、自主的にローズティーやラベンダーティー等を飲んでいた。

 これで、必ず上手く行くとは思っていない。

 ただの気休めだ。


□月◇日

 東の国の王女を迎えに行ったユーキは、その姪御様を代わりに連れ帰って来た。

 その御方は、失礼だが、男性にしか見えなかった。

 ユーキは彼女を愛していないだろうし、恐らくこれからも愛さないだろう。

 だから、彼女にだけは、密かな妨害をしない事にした。


(翌年)○月×日

 ウィンディア妃・フィアリア妃・ライティナ妃の懐妊が判明した。

 どうやって、流産させようか?


○月▲日

 ユーキが、王妃達を引き連れ、魔王の残党狩りに出かけた。

 妊娠中の三人も一緒に。

 馬鹿なのだろうか?


△月△日

 ユーキ等が帰って来た。

 三人は流産したそうだ。

 そして、あの男共は、ナイティア妃の裸体を見た為にナイティア妃に斬り殺されたと言う。

 女なら誰でも良いのか。

 この手で復讐出来なかったのは残念だが、王妃の裸体を覗き見したと言う汚名が後の世にまで残るであろう事を考えると、これで良かったのかもしれない。


△月◇日

 ナイティア妃は、将軍等を殺害した罪だとかで幽閉されていたが、本日解放された。

 東の国から抗議があったかららしい。

 他の妃でも同じ対応とするのかと問われては、嘘でも「はい」とは言えなかったらしい。


(結婚から五年後の)×月▽日

 ナイティア妃が懐妊した。

 ユーキは彼女の元に通わずにいたが、他の妃が中々子を産めないで居た為、奮起したナイティア妃がユーキを襲ったのだ。

 魔王を倒した勇者の抵抗をものともしなかったナイティア妃は、何者なのだろうか?


(その翌年)×月□日

 ナイティア妃が無事に産んだ王子が、後継ぎとしてお披露目された。

 ライティナ妃達は、とても悔しそうだった。

 溜飲が下がったので、もう復讐は止めようと思う。

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