3.アンジェリーナを嫌いな俺
結婚したくないと言うアピールの為か花嫁衣装を台無しにしたアンジェリーナを離宮に返した後に行われた結婚式は、東の国の大使等が式場から無断で立ち去ったと言う問題があったものの、無事に終了した。
ところが、幸せな気分をぶち壊す様に、アンジェリーナが大使等と共に東の国へ帰ったと報告があった。
どうして、東の国の連中は、何時も何時も我儘放題に振舞うんだ!
しかし、新婚初夜と言う事もあり、対応を皆に任せて、俺達は蜜月を楽しむ事にした。
一箇月程が経ち、漸く嫁さん達も満足したので、俺はアンジェリーナを連れ戻す為に東の国を訪問した。
「アンジェリーナは勇者殿のお気に召さなかったようなので、代わりに我が娘を嫁がせたいのだが」
アンジェリーナを迎えに来たと言う用件を告げると、東の国の王はそう言った。
「ナイティア。入りなさい」
「はい。お父様」
男の声?
疑問に思った俺の前に、白いドレスを身に着けた筋骨隆々の大男が現れる。
「娘のナイティアだ」
「む、娘?!」
「女だてらに己を鍛え、強くなる事に喜びを見出した結果、並みの男より強くなったお転婆な娘だが、勇者殿は強い女子が好みと聞く。最初から娘を嫁がせれば良かったのだが……。妹には悪い事をした」
「勇者様は、叔母様の様な美しい方がお好みかと思って辞退しましたの。ですが、結婚を拒否なさるほど、弱い女子を嫌ってらっしゃったとは。私、勇者様の為に、結婚後も強さに磨きをかけますわ!」
俺は、愕然として二人の話を聞いていた。
嵌められたのか? この男の様な王女と結婚させる為に!
「誤解だ! 俺は、アンジェリーナと結婚しないつもりは無かった! アンジェリーナが」
「今更その様な事を言われても、アンジェリーナは既に他の男に嫁がせてしまったのでな」
俺の言葉を遮り、東の国の王はそう言った。
もう他の男に嫁がせたなんて、やっぱり、最初から計画していたんだな!
「ところで、離宮に侵入し、妹の花嫁衣装を台無しにした犯人は、どうなったのかな?」
白々しい。お前等が仕組んだ事だろうが!
だが、流石に一国の王に対して、証拠も無しに糾弾する事はしたくなかった。
「鋭意捜索中だ」
捜索などしていないが、俺はそう答えた。
「勇者殿ならば、既に捕獲済みかと思っていたが」
「……買被りだよ」
あの時直ぐに捜査して居たら、証拠を見付けられたのかもしれない。
後悔しても後の祭りだ。
まあ、良い。
結婚するだけして、何もせずに放っておこう。
この国の初代国王である勇者王ユーキには、六人の妃が居ました。
後継ぎを生したのは、東の国の王女であったナイティア妃です。
他の妃は、不妊と流産を繰り返し、一人も子が生まれませんでした。
ナイティア妃が毒を盛ったという説がありますが、定かではありません。
かつて、ナイティア妃以外の妃は、勇者王と共に魔王討伐を為しました。
その時に魔王に呪われた為に、子が生まれなかったのだと言う説もあります。
近年、後宮女官を務めていた女性の日記が見付かり、その内容から彼女による復讐であった事が判明しましたが、上手く行き過ぎている為、創作であると言う意見が多く出ています。
2020.02.08 「持った」を「盛った」に訂正。