休日編 空の場合
「はい。以上です」
画面が消え、疲れた顔が映る。僕は内閣総理大臣にこの一週間の報告を済ませた。ちらっと時計を見ると、十二時を回ったところだった。確か今日のご飯当番は透だったか。食堂に向かうと、おいしそうな香ばしい匂いが鼻をくすぶる。これほどエプロンの似合わない男はいないだろう。だが、何故か奴は料理ができるのだ。面白いことに。メニューはコロッケ。一口放り込むと
「詐欺だ」
と呟いた。それを前の席で聞いていた祐希が口を開く。
「ですよね…今までも何度かありましたけど、久々に食べて、やっぱりおいしいなと思いましたよ」
嬉しそうに頬張っている。なんて、幸せそうなんだ…
「ほんっと。ムカつく」
僕の隣の席に腰を下ろすやいなや、そういうことを言ってきた。面白いから少しからかってみる。
「零、料理全然だもんね」
零は頬を膨らまして、悔しそうに言った。
「できるもん」
「何できる?」
「カップ麺」
「それは料理じゃない」
そのやりとりに祐希が腹を抱えて笑い始めた。
三人で食堂を後にして受付を見ると、子連れの女性が来ていた。少女は僕の顔を見るなり、満面の笑みで足に絡みついてきた。少々戸惑い、首を横に向けると、二人は手を口に当て、大げさに引いていた。
「先輩!まさか…ロリコ…」
「空、犯罪だよ」
なんという言われよう。お客さんの前だからやめなさいという言葉を飲み込んだ。とりあえず、面会室に通す。
「先日お邪魔した。根室さんですよね」
奥さんは微妙な顔をして頷いた。真剣な話をしようと、口を開こうとしたとき、袖を掴まれた。たしなめようとした奥さんに、いいですよと言って、どうしたの?と聞くと、少女は少し俯いた。
「おにいちゃん。おとーさんね、こわいおじさんたちといて、こわかったの。わたしとママはもうおとーさんにあえないから…わたしがママをまもるの」
純粋で綺麗な瞳にみるみる涙が溜まっていく。慰めようと思ってやめた。この複雑な感情を顔に出さないように全神経を注いだ。
「空さん」
「はい」
そういえば、事情を話しに行った時、一発痛いのを貰ったっけ。
「すいませんでした。そして、ありがとうございました」
思わず口をあんぐりと開けてしまった。
「はあ」
と同時に腑抜けた声も出た。
「私は、主人を奪ったあなた達を許すことはできません。ですが、主人を苦しみから解放して下さってありがとうございます」
去り際、奥さんは笑顔で一礼した。笑顔の二人を見送って、自分が惨めになった。
鬼を殺して、挙句の果て鬼畜と罵られようとも。たとえ、恨まれても、殴られても、僕たちは剣をとることをやめられない。自分に潜むバケモノをそっとしまい込んで。ふと、呟いた。
「さて、この濁りきった目で何を見ようかな。
次は零編でーす




