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4 狼の能力

『おい、お前ら気を付けろ』

突如無線が入った。二人は耳を傾ける。

『そっちに何人か行った』

二人は同時に息をのんだ。その直後、銃声と共に車が下に下がるのを感じた。

「後ろか!」

零が窓から顔を出す。そこには、黒い車がスピードオーバーして走っていた。お互い顔を見合わせると、小さく頷いた。空はアクセルを緩め、零は窓から屋根に上った。

「あの女イカれてんのか」

車内でモブAが呟く。モブBはアクセルを緩めない。二台の間隔が徐々に狭まっていく。真横に並んだ時、零は屋根から屋根へ飛ぶ。モブBは窓を開け、空に銃口を向けた。が、空は右手でハンドルを持ち、左手でライフルを構えた。スコープを覗かずに引き金を容赦なく引いた。モブBのこめかみ辺りを空の銃弾が真っ直ぐに通り過ぎる。

行き場を失った車は道路を外れ、電柱に衝突。横転した。中を終えた零が車から飛び降りた。限界を迎えた空の車もしばらく進んで停止した。零は狭い車内で戦ったせいか返り血に濡れている。それを見て空は後ずさりしながら、

「零ちょっと、近寄らないで」

と手を前に出した。零は溜息をつくと

「じゃあ、着替えてくるから」

少し悲しそうな表情を見せると去っていった。

取り残された空は大きく息を吐きだし、無線機に話しかけた。

「透」

『はいはい。こっちは最終拠点に到着っすね』

「了解」

無線を切ると、携帯に透の現在地が送られてきた。

「どうするかな…これ」

死体を見て呟く。自分が打ち抜いたモブBにじりじりと寄り、じっと見つめた。ゆっくりと手を伸ばし、頭を触った。異常に笑けてきて、思わず口に手をやる。すると頭に痛みが走った。

「痛い…殴ることないじゃん零」

「黙れ死体フェチ。行くぞ」

「あっ…うん」

死体と赤い血液を背景に去るのは何度目だろうか。

狭い車内で長い刀で戦ったせいか先が少し欠けてて、零はめっちゃ不機嫌でした。



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