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5 狼の危機
「ここから出ねぇと」
縄をほどき、戸のそばに寄り、耳を澄ます。
「足音なし。監視なし。なめられたもんだな俺も」
傍にあった針金を鍵穴にさし、音を頼りに開けた。カチッという音と共に戸が開く。冬なのに外が暖かく感じられた。
「それにしてもここは…」
思わず口を塞ぐ。視界がぼやけてきた。体がやけに思い。息が苦しい。胸の奥から風のような音が聞こえる。
「はぁ…げほっ…かぁ…はぁはぁ…」
窓際にもたれ、窓のカギに手をかける。だが、力が入らず、ズルズルと体を下げていった。
「空…早く…来い………」
ゆっくりと呼吸を整えようとして、失いかけの意識をなんとか保っている。ふと、見上げると、雨上がりの澄んだ美しいソラが広がっていた。
透が感じた危険は喘息の事だったんですね。




