2 狼の戯れ
「ふぅー気持ちいー」
零は肩まで浸かり、夜空を見上げていた。
「ここの温泉気持ちいですね」
志保が呟く。皆静かに思い思いの温泉を楽しんでいた。しばらくの沈黙の後、志保が口を開いた。
「そういえば、零先輩の能力ってどんなものなんですか?」
零は、目を丸くした後の高々と笑った。
「いや、そんなに大層なものじゃないよ。少し視力がいいってだけ」
「どのくらいなんですか?」
「うーん。十二くらい」
一瞬の静寂のあと、一斉に口を開いた。
は?
十二!?
人間ですか?
人ってよくても二ですよ!
エトセトラ。
好き放題言い合った後は、お湯をかけあった。久々に人間らしい笑顔を見せる。その声は水と共に浴槽の中に溶けて沈んでいった。
「ねーねー空」
透が息を潜めてねじり寄ってきた。適当な返事をした空は頭にタオルを乗せる。
「露天風呂でのお約束イベント!」
「大体予想がつくよ」
「そう!の・ぞ・き」
と拳を高々と上げるものだから、空は溜息をつき、そっぽを向いた。
「零に怒られても知らないよ」
「何言ってんだ!お前もやるんだよ」
「やだよ。僕は出るよ」
出ようとしたのを透が足を掴んで水の中に引きずり込んだ。
「お前も共犯者になれぇーー」
「透一人でやりなよ」
言い合いをしていると隣から声が聞こえた。
「透、聞こえてんぞ」
透君の心はいつまで経っても青年。