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夜の娘  作者: 新田納豆
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 三番目のお兄様は、ちょっと不思議。不思議なところは沢山あるけれど、まず、名前。長男のアルフレッドお兄様、次男のクレメンスお兄様に、ナハトお兄様。そして私、長女のルクスイーレ。名前が三文字だけというのは、私の知る限りではナハトただ1人だけ。異国の言葉で、夜という意味を持つという。どうしてそんな名前にしたのか母に聞けば、王都にも領地にも夜の縁ある地が近くになかったからだという。近くにあるから、ではなく、ないからその名を付けたというのも奇妙な話だ。それに、今では領地のすぐ傍に夜の森と言われる森がある。年配の使用人が言うには、ナハトお兄様が生まれる前まで森はなく、生まれた後気が付いたら森が出来ていたのだという。ナハトお兄様の逸話は多く、事欠かない。他の人にとってはあり得ない出来事も、ナハトお兄様が関わってるとなれば納得してしまう。例えば、朝は毎朝鳥に起こされるとか、池の上を歩いてみせたとか、外出を渋った途端豪雨になったとか、風で屋根の上まで飛ばされたかと思えばまた風で無傷で下まで帰ってきただとか。ナハトお兄様自体はそれを不思議だとは全く思っていなくて、当たり前のようにそれらを受け入れているから、こちらもそういうものかと受け止めてしまうのだ。明らかに不思議なのに、不思議じゃないですよなんて顔をするから。


「あら、ナハトお兄様。父上の部屋から出てくるなんて、どうしたんです?」

「ああ、ルクスイーレか。首都には行かず領地に残ろうと思って。父上に相談していた」

「残るんですか? 何故?」

「離れがたい人がいるんだ」


 照れたように仰るナハトお兄様が不思議で、まじまじと見つめてしまった。ナハトお兄様は不思議で、浮世離れしていて、あまり人に関心がない人だったのだ。人とお喋りするよりも、動物と戯れたり植物を見ていることの方が多かった。家族にも一線を引いているように感じて寂しく思っていたのだ。


「アンジェリカ、お茶の用意を。ナハトお兄様、その方について詳しくお話になって。ぜひお聞きしたいですわ」


 逃がさないぞと腕をぎゅっと抱きしめれば、ナハトお兄様は仕方ないなと苦笑いした。

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