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短編

塀の中

作者: 阿江

 屑が。目の前の大学生に心中で吐き捨てた。

 まじで何で大学生がバスの座席に座るわけ、なんなの。お前ら、遊んでるだけだろ。ちょっとはさあ、へいこらすれば?


 私はずっしりとした肩の重みに、歯をぎしりとかみ締めた。教科書、ノート、世界史の資料集、辞書2冊、参考書1冊。肩、首に怨霊でも乗せているのかと思うくらい、重い。

 この学校鞄――――目の前の男に投げつけてやろうか。


 ……落ち着け。ゆっくり目を閉じて、自分自身に言い聞かせた。

 少しストレスが溜まっている、だからイライラするのだ。


 大丈夫。このまま行けば、目標の難関国立には余裕で合格できる。ここで躓くわけにはいかない。


 こんな屑どもとは違うのだから。


 遊んでいる同級生。彼らの将来は知ったことじゃないが、どうせ無意味なものだろう。中小企業のそこそこの社員に納まって、別段何も生み出さない。そしていつしか何も考えなくなる。

 

 私は自分が冷静な女で、たいていの辛いことは無視できる性質であることを知っている。


 しかし、受験。これは精神に尋常ならざる悪影響を与えてきた。

 夜中に目覚めれば、身体が何故か動かない。舌と眼球だけ動くので金縛りかと思い、翌朝調べてみると、ストレスときた。笑える話だ。ストレスで金縛り。

 毎日毎日、学校の残って勉強する。家は母子家庭なので、予備校にはいけない。というか予備校に行っても底辺大学に行く人間の脳はどうなっているのだろう。豆腐でも詰まっているのだろうか。


 もうそろそろ、終わる。模擬試験ではA判定が出ている。当たり前だ。それだけ勉強してきた。

 毎日毎日毎日毎日毎日!


 センター試験は1週間後に行われる。その日はタクシーで行くことにした。少し遠いけれど、タクシーなら勉強できる。バスや電車では異動時間が無駄になる。寝すぎると思考力が落ちるタイプなので、前日は12時に寝る。


 バスから降りた。停留所から学校までは10分程度。ゆっくりゆっくり歩く、今日の靴下は何故かすぐにずれるのだ。


 鬱陶しい。ああ校門の前に立っている教師も鬱陶しい。朝は声が出ないんだって。なんで朝っぱらから大声で挨拶しなくちゃいけないの。ちょっと意味が分からない。

 つうか毎日毎日朝立っているメンバーって体育教師なんだよね、それも若い。


 教師の中で上下関係とか笑える。恥ずかしくないんだろうか、しかも生徒にまで透けて見える人間関係。薄っぺら。


 ああイライラする。



 家に帰ると、誰も帰っていなかった。玄関で靴を脱ぎ、私はすぐ右手にある自室へ入った。いつもながら汚い部屋に嘆息が漏れた。

 あいつの嫌がらせだ。散らかった部屋、足元にはプリントが散乱している。電気をつけて、はいつくばって整理する。幸い衣装ダンスに手をかけられていなかった。


 括った髪がほつれて目にかかり、それを耳にかける。


 ああ時間の無駄。せめて迷惑をかけるなよ。


 私の部屋の隣の『住人』の馬鹿馬鹿しい所業に呆れて笑う。文句でも言ってやろうかと考えたが、あまりにも無意味、無生産な行為なのでやめることにした。


 それに――どうでもいい。心底。


 きっちり4時間それから勉強して、リビングに向かい、レトルトのうどんを作る。ねぎを切り、卵を割り落とす。


 うどんは好きだ。温かくておなかがいっぱいになる。うどんは毎日でも食べられる。


 一人で顔をほころばせながら食事を続けていると、ふすまを開ける音がして、どこか鈍そうな足音が響いた。


「……俺の分は?」

 顔を上げずに「ない」と答えた。

 無言が続き、「作れよ」といわれる。「なんで」と聞く。


「いやっ、つくれよ」

 面倒になり無視する。愚鈍な男だ、こういうような人間と結婚するやつは日々苛立ちとの戦いだろう。

 なんだか妙に哀れに思えて、「馬鹿すぎるって辛いことだと思うけど、がんばって生きてね」といった。


 次の瞬間髪の毛が思い切り、引っ張られた。


 私は髪の毛がぶちぶち引きちぎられる感触を無視し、体をひねってうどんの汁を兄にぶっ掛けた。

 ぎょっとした顔の豚が、目を見開き、汁をかけた後か先かはわからないが、怒りの表情を浮かべた。簡単にいえば鼻の穴が膨らんだ。そして口が半笑いになった。


 髪の毛引っ張られんのってめちゃくちゃ痛いんだけど。なんで私が家畜からこんな扱いされないといけないのだろう。頭は怒りのため正常に機能せず、目の前の兄を豚と認識していた。


 そのまま目をつぶった兄の顔を、うどんを入れていた鍋で思い切り殴りつける。兄の頭ががくりと下を向いたので、続けてもう一度殴りつけた。なんとなくすっきりしたが、やり返されたら元も子もないので、「殺すぞ」と耳元でささやく。


「妹に喧嘩で負けるとか――――ほんと何してもできない人ってできないんだね。基本的に体育教師の言うことは信じていないけど――――まあ体育教師の存在自体信じていないんだけど、中学のときの体育教師が運動できるやつは勉強もできるっていってたの。ばかげた暴論だけどね。実際、何もできないやつって本当に何もできないの、あなた見てそれがわかったよ。すごいね、そういう職業ないのか。結構稀少でしょ何もできない人って、才能かもしれないしね」


「ああそうだ床拭いといて。私勉強してくるよ。お兄ちゃんはがんばってパソコンでレスしてきなよ! それでこつこつ豆知識ふやしてね!」


 とりあえず馬鹿にして、兄が鬱状態になればしばらく何もしてこないだろう。ほんと相手するのも疲れる。死んだふりをしているのか、兄は動かない。どうでもいいので足で体をけりつけると、足を思い切りつかまれた。そのまま脹脛につめを立てられ、思わずもう一方の足でけりつけようとした。しかしその足も抱きかかえられ、そのまま私の体は引き倒された。

 背骨に衝撃が走る。

 すぐに上に乗られればやばい、という考えが浮かんだ。それだけは阻止しなければ。動揺のため鈍った体でなんとか身をよじるが、逃げ切れない。


 こっちも殺しかけたのだ。向こうも殺す気でやってくる。そう考えると、少しの恐怖を感じた。

 何もできずに宙を見上げていると、兄は私の体の上に乗っかった。


 怒りのためか呼吸が荒い、寝すぎで浮腫んだ顔は獰猛に歪められていた。


 思わず笑う。


「ハハ。顔劣化しすぎ。なんでそんな顔になったの?」

 笑いながらの問いかけに、兄は口をブルブル振るわせた。


「俺はっ俺は! お前もっ! 俺だってこんな風になりたくなかったよお!」

 今日はちょっとこの男、センチになっているな。よくわからないがいつになく素直だ。

 いつもなら滅茶苦茶なことを泡を飛ばして言うのに。


「そうなの! なりたくなかったの? いやわかってたけど。誰だってなりたくないもの。

 うんじゃあさ、一回死んでみたら? ほら生まれ変わりってあるらしいし。生きてやり直すの……ほら、ね、お兄ちゃん……無理そうでしょ。相談乗るよ? 身投げとかどうかな? お兄ちゃんが苛められた高校で自殺するのとか。前言ってたでしょお兄ちゃん。身投げって落ちる前に恐怖で死んでるんでしょ? 気の弱い人は。気の弱い、ううん、気の優しいお兄ちゃんにはぴったりだよ!」


 次の瞬間頬に熱を感じた。焼け付くような熱さとジンジンとした痺れ。

 いたい。こいつ、殴りやがった。


 また頬の熱。


 また頬の熱。


 また頬の熱。


 考える。手は自由だ。だけど足は押さえられている。仕方ない。


 上体を勢いをつけて起こす。至近距離から殴られ、目に激痛が走る。そのまま頭突きをする。一度ではだめそうだったので、もう一度頭突き。アドレナリンでも出まくっているのか、痛いことは痛いが、どちらかというと興奮していて気にならない。


 時代が時代なら、戦士になれたかもしれない、などとくだらないことを考える。

 兄がひるんだ隙に、足を引き抜いて、近くに転がっていた鍋で、何度か肩を殴る。今は力加減ができないので、頭は殴らないほうがいいと判断したのだ。肉体は堅いところはとてもかたい。だけれど何度も殴り続けていると、肩が肉としての柔らかさを主張しだして、前腕が弛んだ肉の感覚に充足していく。


「お兄ちゃん、肉弛んでるね」

 なんでそんなことを言ったのかはわからないけれど、その言葉に兄は肩を震わせた。

「も……ぅ、ゕん……して……」

 小さな言葉がうつむいた兄の乾いた口から洩れた。聞こえない。


「何?」

「もう、勘弁してく……れ」

 ぼそぼそと喋るからか、声が湿って聞こえた。


「そうだね、今日はちょっとやりすぎたよ。じゃあここらへん汁こぼれてるからふいといて」

「……ああ」


 

 教師ってなんでこんなに一般の感覚からずれてるんだろ。本気で分からない。

 なんか知らないけど、もうちょっとでセンターなのに部活に顔出せとか言われたんだけど。

 本気で謎。

 私はイライラしながら、寒い廊下を歩いていた。階段を下りていると掃除をしている連中が塞いでいたりして、本当に面倒くさい。

 ああ時間の無駄。

 合理的精神に欠ける。


「せんぱい、頑張ってくださいね」

 一つ下の女の後輩がそう小さく言ってきた。私は小さく頷いて、「出来る限り、全力は尽くすけど」と言った。

 後輩はわざとしているのかと思うほど犬っぽい目をして、「せんぱいらしい」と優しく囁いてきた。

 あんまり好きじゃなかったし、今でも好きじゃなかったけど、これくらいの距離感心地いい、と思った。


 帰りは同輩の男とバスに乗った。二人席しか空いてなかったので仕方なく隣り合って座る。仲良かったらそれなりに配慮するが、別段親しくないので鞄から単語帳を出した。

 しかし男はなぜか、じっとこちらを窺ってくる。盗み見というより、堂々と静かに眺めてきている。

「なに」

 私は単語帳を閉じて、男の方を見た。他の男なら無視して勉強し続けただろうが、この男のことは苦手だった。私の所属するクラスは一応進学クラスで、こいつもクラスメイトだが、唯一就職する人間で、かなり変わっている。

 色々エピソードもあるけど、全体を見ないとこいつのことはわからない。


 嫉妬なのだろうが、こいつに対する感情は。


 私が中学生の時に、フィギュアスケートしている女子がいると聞いたことがあった。地味なグループに属していたその女子は、他のグループメンバーを結構自分とは違うという感じで接していた。はっきり言って、見下していた。たいした選手じゃないくせに、などと私は思っていたし、まあ根本的にフィギュアスケートが何か良く分からなかった。兄は何故だが、フィギュアスケートに執着していた。

 その女はあほみたいに、他のフィギュアスケートの選手と仲がいいアピールをしてくる、そういう感じの人間だった。地味で勉強も普通レベルで、そんな普通の人間が中途半端なステータスを鼻を膨らませて、自慢しているのだ。くだらぬ、人間だと思っていた。

 私はその存在を高2の頃まですっかり忘れていて、それでつい最近、その女がテレビに出ていて思い出した。

 何かの大会で二位だったらしい。女はきつく髪を縛って、瞳を思慮深そうに伏せて、ゆっくり反省点を述べていた。

 私はちょっとそのテレビに見入った。

 

 ああこいつ、ちゃんと一般人枠から外れてる。


 そう思って、私はものすごく小さいが大きい差を感じた。彼女はもともと一般人だったが、それを超えた。きっと小さい差だが、その差は広がっていく。

 この女はまぎれもなく、一般の普通の感性の人間だった。

 特別な人種になりたい欲望を持て余した、地味な女。

 けれど、やはり努力したんだろうな、と思った。


 そんなことを考えながらも、私はこの女をわずかに見下した。この女は一度たりとも、卓球・バトミントン・柔道、そういう一対一の競技で私に勝てたことはない。陸上は負けたが、まあそれは。


 そんな小さい部分で争い、一人で勝負している自分が途端に馬鹿らしくなって、少し恥ずかしくなった。

 こんな、向こうが勝負とも思っていない分野での、勝負なんて。

 

 例えば、私が中学の頃、容姿のいい女がいた。好感を持っていた。けれどその女が時折、私に向ける見下した態度は鼻についた。いや、私と言うよりも、ほぼクラスの女子に。

 まあ、何故かは知っていた。

 彼女には彼氏がいて、大変容姿が良かったからだった。


 くだらないことだ。私は容姿のいい彼氏などいらない。けれど私は彼女のフィールドで勝手に勝負させられて、勝手に負けさせられているのだ。


 私は確かにかなり学力を重視している。けれども、そういう風に人を格付けしたいとは思わない。

 まあ、この主張もくだらないことだ。


 そしてこの横の男は、フィギアスケートの女に近い。この男はあの女よりももっと特別で、本当に何かするだろう、そして人生は本当に物語のような、と思わせるところがある。頭も良くて、話も上手で、そして優しく、変な境遇と、しかもかなり変わっている友人関係、こういうものがそろっている。

 

 そして彼は、自分の人生に疑問を持っている。

 私は彼を評価していた。自分の中で、最高級に。


 私は昼休み、教室で勉強していた。パンを食べながら、じっと参考書に目を通していたら、ふと笑い声が耳に入り、顔を上げた。

 端の席にいたからなのか、それが本当によく見えた。

 男が真ん中にいた。その周りに人がいた。さざめく笑い声がまるで一点に集中しているようで。

 その構図が、深く疎外と理解を私の心に生んだ。誰の代わりでもこの男の役は務まらず、中心に居て、端の人間を見ることがあっても、交わらない。ただひとつ男が中心だ、というのが分かるような構図だった。


 たぶんいつもこんな風景だったのだろうな、と私は思った。まあすぐ参考書に目を戻した、だってそういう存在はいる。


「ぺんだこ」

 男はちょっと笑って、でも目は笑っていなかったし、正直何言っているか分からなかった。

 何こいつという目で見ていると、男はわたしの手を取って、「すごい」と言った。


 さすがに何言っているかは分かった。私は自分の手を見た。中指の第一関節あたりが膨れていて、奇形のようだった。

 気持ちわる。流石に自分でもそう思って、苦笑いした。きもすぎる。


 次の言葉を待つ。労働する人間の手は美しい、とかかったるいことを言われたら殴ろうかと考えながら、まあできないだろうなどと思った。


 本気で美しくないことは確か。


「痛くない?」

 ペンダコに触れてくる。手も触られるのは嫌だったが、さすがに不愉快で、そっとひっこめる。

 会話するのが、面倒になって無視しようとしたら気にせず何か言ってくる。


「先生が言ってたよ。小テストで、一度も満点を逃したことが無いって」

 おいおい、情報漏らすなよ。


「どの先生」

「うん、言わない、顔が怖いし」

 笑う男に、私は本気で腹が立ったが、何も言わなかった。


「三年間、あんまり話せなかったけど、俺は話したかったよ」

 そうですか、どうでもいいわ。

 私の表情を静かに見て、男は言った。

「相槌も打たなくていいし、寝ててもいい。少しだけ、話をきいて」

 真摯な声だった。いきなり、どうしたのだろう?

 怪訝そうな、というよりもいっそ感じの悪いという私の顔に、男は淡々と語り始めた。


「三年のはじめ、俺は二週間くらい旅行に行って、それで帰りの飛行機の中で先生からメールが来たんだ。『明日から土日だから、そのどっちかにちゃんと話したいって』」

 へえ。私は内心驚いた。担任は若い女教師で、なんとなくこの男に対する態度は、敬意と羨望、わずかの嫉妬が入り混じったもので、担任はたぶんこの男と、担任と教師という枠を飛び越えて、親しくしたかったのだろうな、と思えるような中途半端な対応だった。

 だから、そういう風にこの男に何か担任として意見を言っていたのか、と意外だった。



「俺は土日に予定が入ってて、月曜から、知り合いの仕事の手伝いが入ってた。ちょうど新学期がはじまって、一カ月休んだところだった。今日ではだめですかって返した。そのとき――――心底すごく俺は間違っているって思った。いや、間違ってるんじゃないか、って。俺は目的もあって、努力もしている自覚があった。でも、我慢はしていなかった。

 そのまま夜七時くらいに担任と生活指導室で話した。俺はその時何も言わなかった。ただ話を聞いた。それで、なんでか教室に行ったんだ。そしたら、そこに人がいた。無表情で、すごい勢いで文字を書いてた」

 私は黙り込んだ。その出来事はすんなり思い出せた。

「外は真っ暗で、端の席で。

 あんまり自分の人生がどういうものか思ったことが無かったけど、旅行から戻って、そのとき。ああ、自分のしていることは間違っているけど、それでもいいって思った。自分の人生はこれでいいって。何言ってるか、分からないだろうけど」


 男は改めて、私のペンダコを触って、手を握った。

「尊敬してる」

 身体が、一気に熱くなった。

 私はわかった。この人の言いたいことが、本気で分かった。


 それでも自分の人生なんだってことだ。


 薄暗いなか、あほみたいに必死で勉強している女が正しいと思うだろうか。

 私は、分かっていた。もっともっと面白い人生も、素敵な人生もあるってことに。

 中途半端に勉強しても、素敵な男と結婚すればそれなりに幸せになれることに。

 

 兄に対する対応が、酷いことも、それも全部自覚している。私が根本的に人間が嫌いなことも。

 だけど、私はそういう人生に殉じるしかなかった。

 本当に貧乏な人間は、習い事も何もできないから、勉強するしかないのだ。そして誰もが言うように、勉強できる環境は金銭がうむ。

 私は小さいころに決めた。どんなに大変でも無駄な努力だったとしても、自分の人生を出来る限る頑張ってよりよくして、幸福になろうと。下も上も見ないで、とにかく自分自身に向き合って、努力しようと。

 目を瞑る。

 大学に行っても、奨学金を全額受ける。有利子の奨学金も受けなければいけない。卒業しても、就職できる保証はない。

 母は助けてくれないし、兄は引きこもり続ける。

 

 兄は可哀想だとも思う。だけど人生を放棄して、同情だけしてくださいなんて認めない。ただ否定はしない。自分の人生だから。


 どうにもならない、それが私の人生なんだ、そうして生きていくことは楽しくないけど、それでもそれが生き続けることだ。


 隣で、あほみたいに旅行に行って、そこで色々な人たちと知り合っている人間がいた。だが、私は学校と家との往復をつづけた。どちらが正しくも価値があるとも違う、私は私の人生を歩いた。

 私の人生は私のもの。


「俺は好きなように人生を歩んでいるか、不安だった。だけど、あのペンを持った人を見て、すごくきれいな直線が見えた。安心した」


「それは良かった」

 私はそう言った。どこにもいかれない道だけど、それでも私の人生である限り、歩む覚悟も愛することも出来るはず。





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