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恋の魔法使いの病  作者: カシス猫
一章 恋の魔法使いの日常
9/36

魔法使いの少年

5/23加筆、修正しました。


この城塞都市には全部で三つの門があり、それぞれ大きな道に繋がっています。

そしてその一つが、今まさにくぐろうとしているこの古くて比較的控え目な大きさの入り口。


通称、「(ふところ)の門」。


いつ見ても立派な門だと思い、くぐりながら見上げていると隣から声をかけられた。


「よう、坊主。久しぶりだな」


黒い憲兵の制服を着た灰色の髪の大男が声をかけてきた。


「ギルさん、お久しぶりです。奥さん、もう赤ちゃん産みました?」


「おう。もう、産んで一月経ってる。元気なもんだ」


そう言って、ギルさんは嬉しそうに笑った。


普段の私は、男性に見える容姿なんてしていない。むしろ、十代にしては出てるとこは出てる。我ながら有難い姿で、日頃から親に感謝させて頂いてます。でも今、彼には私が14,5歳の男の子に見えるようにしているのよね。

そう、私の今の姿は少年なのです。

髪は赤くなく、黒い直毛の賢そうな男の子。取ってつけたような敬語は、女の子っぽい口調がでないようにと考えた設定にした。名前は一応、ロイくん。

これは蛇足なんだけど、“魔法使い”は人に本当の姿を晒さない。

優秀な魔女や魔術師はその能力から、欲しい人は沢山いるのだとか。だからまだ見習いの“魔法使い”を捕まえてしまおうとする人もいる。そんな(やから)に気を付けるようにと、リア婆やデイルさんに散々言われた。


私達、“魔”を扱う者には位がある。


まず見習いや魔力はあるが使い方が未熟な者一人前になりたてなんかは、みんな()(くる)めて“魔法使い”。


一通りを知識を納め、抜きん出た実力を持っている人を“魔女”、“魔術師”。


その上には、まだよく教わってないけど、“淑女(レディ)”や“(きょう)”なんてのもいるみたい。

この人達くらいになると、滅多に弟子は取らないんだって。


つまり、弟子は魔法使い。師匠は魔女や魔術師と呼ばれてる。


そんな特殊職業だと感謝もされるが、恨みも買う。


そりゃあね、仕方ないんだよ。呪いや毒も場合によって扱いますからね。依頼だって、まともなものばかりとは限らない。

それに私達のような者の中には、優しい人達もいるけどそうじゃないのもいる。そのせいで、魔女や魔術師が嫌いな人はいなくならない。


それに見習いの最終課題の一つ、“恋の魔法使い”も他人の色恋に首突っ込むのが仕事。最終課題はいくつかあるけど、他も似たり寄ったり。これでは、恨まれない方がおかしい。

魔女や魔術師以上の方々なら、姿を偽らなくてもそんな奴等は返り討ちですよ。

だけどこっちは自衛すら覚束ない見習い。ちょっと強い奴来たら、あっという間にやられてしまう。

本当の姿が分からないに越したコトはない、それが魔法使いの常識。知らないで他の魔法使いに遭遇したら、地味に恥をかく。

だから、見習いが最初に教わるのは姿を変える魔法なの。慣れれば人間以外にもなれる使い勝手のいい魔法で、私の得意な魔法の一つ。


「坊主。お前、まだ世話焼きばーさんみてえな真似事してるのか」


「いけませんか?それがなかったら、誰かさんは今だに結婚も出来なかったでしょう」


そう、このギルさん。私がくっつけた記念すべき10組目の男女の片方です。告白・恋人の関係をすっ飛ばし、求婚からのさずかり婚という豪速球でお相手を射止めた熱い人です。それまでの消極的な態度が嘘のようだとは、近所の奥さん達が井戸端で教えてくれました。

ギルさんは頬を赤らめ、眉間に皺を寄せている。筋肉隆々の彼がそんな反応をしても、決して彼の奥さんのように可愛くはならない。


「いけなくはないが、お前は強引な所があるからな。いつか、事件に巻き込まれるんじゃないか。って、うちのミレーヌが心配してたぞ」


ミレーヌさんとは彼の奥さんで、その時の依頼者だ。奥さんは私が恋の魔法使いである事を知っている。どうやら、心配してくれていたみたい。


「じゃあ用が済み次第、ギルさんの家に顔出して来ます。赤ちゃん、見たいですし」


「ああ、顔を見せてやってくれ。娘もミレーヌに似て、可愛いぞ」


さっきの気持ち悪くも厳めしい顔が、やに下がった気持ち悪く甘ったるい顔になり果てる。


気持ち悪いのは変わらないか。

だけど、そんなギルさんは幸せそうで私も笑顔になる。


「そうだ、もうすぐー」


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