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恋の魔法使いの病  作者: カシス猫
一章 恋の魔法使いの日常
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魔女と人形の甘い密談1(デイル)

長いから、二話分に分けました。


間男ならぬ間女を、大陸最大の運河に投げ捨てて帰ると弟子の娘ではなく魔女の小娘がいた。マンドラゴラ共の(すみか)は周辺と一緒に復元されていた。


「…弟子は?」


尋ねると、こちらにを振り返り小娘は答える。


「さっさと、風呂に入らせた」


年頃の娘には嫌だろう、と照れながら小娘はこぼす。


魔女の小娘は、弟子を大層可愛がる。


着の身着のままでここに来た弟子の服は、小物に至るまでが全てこの魔女の小娘手製であるとは誰も思うまいよ。

弟子でさえきっと、どこかで買ったものだと思っているだろう。

小娘は持っていた瓶のコルクを開け、マンドラゴラの女が植わっている周り目掛けて中の液体を回しかける。

マンドラゴラの女は満足気に(すみか)(うず)もれている。匂いからして、瓶の中身はブランデーとわかる。自棄(やけ)酒を()みたいのは、何も人だけではないという態度で踏ん反り返っている。


あいも変わらず、マンドラゴラは男女共に不遜な種族だと呆れかえる。


小娘も弟子の娘にマンドラゴラの女が酒ですぐ宥められると教えてやればいいものを、あの娘にはまだ早いなどと酒に触らせもしない。まだ未成年だということも考慮は出来るが、しかし…


「…甘やかしが、過ぎる」


この小娘、弟子が可愛くて可愛くて仕方がないのだ。どれくらいかと人魚の魔女の言葉を借りて、分かりやすくいうならば


『リアはねぇ。ロザリーちゃんが可愛いくって可愛いくって、っもう、生きてるのが辛いくらい好きなのよぉ〜。キョホホホッ』


ということらしい。

あの本当に楽しさを表現した高笑いを思い出しながら、つまらなそうな顔の小娘を見る。


この小娘の猫っ可愛がりには、理由がある。それは彼女の心に未だ居座るあの男が、関係している。だから、事情を知る昔馴染みには簡単に検討をつけられてしまう。

他人(ひと)のコトは言えないが、この魔女の小娘は時に愚かに見えるほど一途だ。執念深いとも、言うが。人間で、こんな奴はとても珍しいと僕は思う。


だが、愛玩(それ)教育(これ)とは話が別だ。


師であると覚悟を決めたのなら、弟子を導き育てなければならない。でなければ、なんの為に連れてきたか分からない。


「あの娘には、まだ早い」


そこがこの小娘のまだまだ“小娘”足る所以(ゆえん)だ。


「それに、…」


その声は、存外に気弱い。そういえば、この小娘は弟子の時代の頃から人に対して臆病だったと思い出す。

それに比べて、今の弟子は時々抜けてはいるが、普段は冷静で器用になんでもこなす。


だから心配せず、信じてやれば良いのにとも思う。


「あの()には自棄酒を呑みたい時や何もかも忘れたいと思う時があるなんて、きっと想像も出来てないよ」


…小娘は、よくわからない理由を返してきた。


「…課題をこなしている。理解はしているはずだ」


「それでもだよ。知識としての理解と、自身の心は別さ。あの娘は恋もまだなんだよ」


そう言って魔女の小娘はゆっくりとしゃがみ込み、マンドラゴラのたぶん頭らしき場所を撫でる。

やはりまだ僕には、人の心は掴みきれていないらしい。特に、女心というモノをだろうか。


「それよりも、デイル。最近、これの番が出かける事はよくあるのかい?」


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