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恋の魔法使いの病  作者: カシス猫
一章 恋の魔法使いの日常
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真のツンデレに歳は関係ない

連載再開します。


「ただいま戻りましたァ…」


ロザリーは重く感じる足を引きずり、玄関の戸を開ける。


「遅いよっ、いつまで待たすんだ。薬には鮮度が大事な時もあるって教えた…」


いくら待っても戻らない弟子を叱りつけようとしたリア婆の声はだんだんと尻窄みになる。


彼女にはリア婆の言わんとすることが、よく分かる。

行きには気軽で清潔感のある姿で出て行き、何故か土にまみれてご帰宅。


「ロザリー…あんた」


リア婆はそこで弟子の胸ポケットに大人しくもふてぶてしく収まってる物体を見て、大方の事情を察した。


「…ロザリー。部屋が汚れるからちょっとそこ、動くんじゃないよ」


そういうと、リア婆はさっさと奥に引っ込んで行ってしまった。

よくわからないが、お叱りは免れたようだ。

ここはおとなしく、玄関口で待っていよう。


少しの(のち)、どことなく愛嬌のある足音でリア婆は戻ってきた。大きなタオルと口の広い透明な花瓶、そして何故か酒瓶。リア婆はほとんどお酒を(たしな)まない。珍しく呑む時も、近くの酒場で飲んで来る。

なのに、うちには必ず二、三本は常備されている。何であるんだろうと、いつも不思議見ていたんだけど。何に使うのかな?


見ているだけの私を置いてまず、リア婆は花瓶を机の端に置く。それから蕾付きと若葉をロザリーから受け取り、雑な扱いで花瓶に挿し込んだ。


「リア婆、何をしてるの?」


視線をこちらに一度向けまた瓶を見つめて、短く何か呟きながら机に置いた花瓶の横をゆっくり撫でる。すると、みるみる水が溢れて来て半分くらいを満たして止まる。


「こうすると、持ちが良くなるんだ。ほらそれより、そのオスどっかに隔離しといで。そしたらこれ持って、風呂に入ってきな」


そう言って、タオルを押しつけてきた。


「え、畑がまだ…」


「そっちは、あたしがやっておくからさっさと行きな。お前じゃ、いつまでたっても終わらないだろ」


そう言うだけ言ってリア婆は返事も待たずにサンダルを履き、すれ違いに扉をくぐり畑の方へ行ってしまった。あれ、お酒持って行ったよ。なんで持っていくのがスコップじゃなくて、お酒なんだろ?


それに雑用って弟子のやることだよね?


「…」


リア婆の行動は、いつも少し照れくさい気持ちになる。

こんな時は、やっぱり甘やかされてるなあと思う。

ロザーリアおばあちゃんは、私の世話を焼きたがる。本人曰く、素人には畑を任せられないだとか手際が悪いなどの理由らしいがそんな事は毛ほども思っていないと今なら分かる。

最初の頃は素直に受けとめて、かなり落ち込んでいたけど。

でも、デイルさんやリア婆の知り合いに教えてもらうと、彼女は私が可愛くて仕方がないらしい。理由を尋ねると、皆一様に生暖かい眼差しで見てくるだけで教えてはくれない。


まぁ、なんとなく分かるけどね。


だから遠い未来になるだろうけど、いつかその事で頼られる自分なりたいと思う。

ここでの生活で、私はリア婆が大好きになっていた。なかなか笑わない人だけど、本当は優しく献身的な女性なのだ。

とりあえず今出来る師匠孝行は、朝食を私の好物の目玉焼きからリア婆の好きなオムレツに変えることだろうと私は気持ちを切り替える。


いつまでもここに居ても始まらない。


棚から予備のビーカーを取り出してそれにマンドラゴラを突っ込む。逃げないよう、厚いまな板を上にのせて足を払って浴室にいく。


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