出会い…2
おまたせしました。
もう一人の相手との出会いです
王は決めたとおりに、何度も彼女に会いに行き、何度目かの時を過ごしていく。
幼い顔立ちの少女は、固い蕾が綻ぶように綺麗になっていく。
その様を王はうれしそうに見つめ続けていた。
彼女が誰にも汚されぬように、彼女には判らないように、自分のオーラを身につけさせていた。
乙女となった少女がその花畑で、花冠を作っていると、背後からガサッと音がする。
草を踏みしめる音だと判って、くすっと笑いがこぼれた。
リュースディアは殊更ゆっくりと振り返り、
「今日は遅かったんですね。」
笑ったままでいってみるとそこには、見知らぬ精霊がたっていた。
初めて見る金色の髪・・・・きつく射すくめるかのような蒼い瞳の青年。
「あっ…」
そのとたん、リュースディアの身体をビリビリと電気のようなものが駆け巡る。
パサッと手にしていた花冠を膝の上に落としてしまった事すら気付かないほど、何かに魅入られたかのように、見つめていた。
まるで…時が止まってしまったかのように感じられ、その姿勢のまま動けなくなっている。
相手が一歩足を踏み出した事で、漸く呪縛が解けたかのように、ハッと意識を取戻し、その場所から身を翻して逃げ出した。
青年は手を伸ばして、呼び止めようとするが何も言えず、手のひらをぎゅっと強く握って地面を見つめる。
乙女のいなくなった後に残された花冠に気付くと、屈んででそれを手に取り、そっと唇に当てた。
無くしてしまった何かを探し出せたかのように青年の顔にはうれしそうな笑みが浮かんでいた。
その頃…
リュースディアは大慌てで湖に戻り、自分の部屋の中にいた。
自分の褥の端に軽く頭を乗せ、ため息をひとつ吐く。
物置にでもなったかのように、身動き一つしないでいたが、小さくため息を吐いた。
フッ…と瞳を閉じると、先ほど見た青年の姿がくっきりと浮かび上がる。
まるで、瞼に焼き付いてしまったかのように…
〔なぜなんだろう…胸がドキドキする…
こんなにも変なのははじめて・・・
王と会っている時とぜんぜん違う。
王と会っているときは、物凄く緊張してしまって、何を話したらいいのかわからないの。
でも、笑うとすごく素敵で・・だからおかしな話をしたりして、笑わせるの。〕
瞼を軽く開くと、自然とため息が零れるから、軽く頭を振る。
今日出会っただけの精霊の事など忘れてしまったほうがいいよね…
王の事を考えると、いつもなら王の姿が浮かび上がってくる筈なのに、王の姿を忘れてしまったみたいに、出会った彼の姿しか思い出せない。
知らず、ギュッと強くシーツのすそを握り締めていた。
〔きつい眼差しに、自分の心臓が鷲掴みされたようで、すごく苦しかった。
でも…あの蒼い瞳を見ていると、もっとみつめていたいような気もする。
私どうなっちゃたのかな?
それとも、もしかしたら、本当にどこかおかしくなったのかも知れない…
自分で気付かないうちに…〕
何処かが変なら、早く寝てしまったほうがいい・・・
ごそごそと水の褥に入り込むけど、すぐその中で深いため息をこぼしてしまう。
ぎゅっと瞑った瞳の奥に、忘れたい彼が浮かび上がってきて、先程よりも胸が苦しくなる。
その胸にそっと手を当て、自分の身体を強く抱きしめて眠ろうとしたが、陽が昇るまで心地良い眠りは彼女に訪れてはこなかった・・・・
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます