出会い・・・1
おそくなりました。
それから時は流れ・・・
動物達が生まれ、地上の支配が人間という種に移ったころ。
精霊達が仲睦まじそうに寄り添っているのを見て、王は初めて自分がずっと一人だったことに気づき、寂しいという覚えた。
だが・・・どうしたらいいのかが判らないまま、それでもその寂しさを紛らすために、不意に地上に降り立ってみる。
人間達の生活は少しだけ精霊王の気持ちを慰めた。
何度か人間の世界に降り立ち、その中でも穏やかな暖かな日に、色とりどりの花に囲まれた水の一族の可憐な少女に出会った。
腰よりも長く伸びた艶やかな緑を含んだ黒髪とそれよりも透き通った黒真珠のような瞳に眼を奪われ、ただ茫然と彼女を見つめてしまっていた。
初めの者達を見ても、それほど眼を奪われなかったことに気付き、精霊王は心底驚いたような表情を浮かべている。
そして、そんな表情を浮かべているのにすら、気付かなかった。
水の乙女は、地上にある花畑に遊びに来ていたのだった。
突然目の前に現れた精霊に驚いて見つめていたが、
「・・・そなたの名は?」
涼やかな声で尋ねられて、意識がはっきりと戻った。
銀の髪…銀の瞳の…それは他の精霊が持つことは有り得ない色。
彼が誰だかを判って答えた声は震え擦れきっている。
「・・・リュース、ディアと・・・申します。」
身体を震わせている彼女を王はやさしく見つめながら、
「そうか・・・良い名だな。
私は・・・」
名を言う前に、少女…リュースディアは口を開く。
「・・・いいえ・・・お名前は言わなくても、判ります。
我等が・・・・精霊の王よ。」
そこまで言うと、彼女は慌てて跪き、頭を垂れた。
精霊王は跪いた彼女のそばに行き、
「どうか、顔を上げておくれ・・・
リュースディアよ。
この私が側に居るのは迷惑な事なのか?」
柔らかな手を取り立ち上がらせてそう尋ねると、少女は慌てたように頭を振り、顔を上げる。
「いいえ!
そのような事はありません。
王が望んだことを一精霊が拒めるわけはありません。
一精霊の私が、王の側に居ることのほうがいけない事では無いのですか?」
強張った表情のまま答えてから、自分の言った言葉の意味に気付くとさっと顔色を青ざめた。
くるくると表情の変わるリュースディアに王は自然と笑って、
「私は確かに初めに生まれた者だが。ただの精霊の一人とだと思えば良いのではないか?」
今にも消えてしまいそうなほど小さく身を震わせているリュースディアに向って優しくいう。
王は一番初めに生まれたから王なのに…それを今更精霊の一人
だなんて…
リュースディアは鈴を転がしたかのような笑い声を立てる。
「・・・あっ・・・・無礼な事だと存じましたけど・・・
笑ってしまったこと・・・・お許しください。」
一瞬にして表情を曇らせた彼女に、精霊王は首を横に振って答える。
「リュースディアはよく此処に来るのか?」
王の質問にリュースディアは白い首をコクリと縦に動かした。
「よく・・・ではないです。
この花が咲いている時期だけ・・・」
はにかむように笑って答える彼女を王は愛しそうに見つめたまま、
「そうか・・・
では・・・私が時折ここに来ても良いのだな?」
尋ねるとリュースディアはしばらく考えてから、ゆっくりと首を縦に動かした。
可憐な仕草や話し方に王はこの少女を気に入った。
そして、この少女を自分の番にすることを決めた。
ただ余りにも急に決めたことなので、リュースディアが承諾するかはわからない。
精霊の王である自分の言葉に従うことは判っていたが、できれば彼女からも自分から番になりたいと思ってほしかった。
だから、王はリュースディアとこうやって二人で過ごす時間を作っていこうと考えた。
時間をかければ・・・彼女もきっと・・・・
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。