精霊王の目覚め・・・
始めまして・・・・
篠田 恢と申します。
ファンタジーものです。
精霊ですv
多分・・・・長くなります・・・
最初から一人で居ることを望んだわけではない。
ただ、はじめから気がつけば一人だっただけのこと。
一人で居ることの深い孤独に耐えていたのにも、自分では気づかずに…知らずにいた。
たった一人の少女がそれを教えてくれた。
それと共に二人で居ることの暖かさも…
---------------------------------------------------------------------
新しく出来た惑星は時間をかけて大気を安定させ、ゆっくりとした動きで新しい生命を少しずつ誕生させ始めた頃…
太陽が海を照らし、波と地面との間に包まれるようにして一人の精霊が生まれた。
広大な自然に育まれ生まれでた精霊は、自分が何者なのかも判らず、ただ一人…空に…流されるまま、漂っている。
何をすべきなのか判らず、目の前で靡いている自分の長い髪をぼんやりと見つめていたが、段々とそれが鬱陶しくなり、靡いている髪を退かそうとして腕を動かすと、ふわっと風が舞う。
自分の腕の中で舞った風は、目の前でくるくると何度か回っているうちに、一人の精霊の姿に変わった。
『我が精霊王よ。
始めの精霊として、お礼を申し上げます。
貴方様が生まれ…そして居なければ、私は誕生出来ず、
また同じ風の一族を増やす事も出来なかったでしょう。
貴方様のために、私は風の精霊達を増やしましょう…』
目の前にいた精霊は跪いて言うと、にっこりと笑う。
…自分が精霊の王?
そう考えこんでいると、透けるような空色の髪と瞳を持った精霊は立ち上がり、高く宙に舞い上がると大きく腕を動かして風を起こし、新たな精霊が一人…また一人と増えていく。
増えていく精霊達は嬉しそうに風にあわせて、舞い踊る。
それがなんとなく嬉しいような気がして、ずっと見つめていたが、自分よりも遥か下のほうにある茶色に何が在るのか不思議に思い、増えていく風の精霊達に気付かれぬようにと、そっとそこから離れ、茶色の地面に降り立った。
自分の爪先が地面に触れると同時に、日に焼けた肌と榛色の瞳を持つ精霊が飛び出した。
『我等の王よ…
土の一族始めの精霊として、お礼申し上げます。
貴方様が地上に降り立たなければ、私は誕生することも出来ず、
一族を増やすことなど出来ませんでした。
私は貴方様のために、私の一族を増やす事にします。』
彼は自分の前にすっと跪き、それだけ言うともう一度頭を下げてから、宝物を触るように大切に地面に触れた。
触れた所から元気な土の精霊達が生まれてくる。
先程の風の精霊達とは違い、地面から生き生きとした精霊が増えていくのは面白かった。
風の精霊達よりも土の精霊達の方が表情が豊かだったから…
風の精霊達と同じように舞い踊るが、身体一杯使って、本当に楽しそうだった…
それを暫くは見つめていたが、ぴちゃんと微かな音が耳に入った。
…一体、何の音だろう?
物静かなその音に機を引かれて振り向くが、音の出所が判らない。
何処からだろう?
首を傾げていると、また…ぴちゃんと先程よりも小さく音が響く。
小さな音のはずなのに耳に入り込んでくるので、その音のする方向に向かって歩き出した。
暫くすると前方に木々が沢山生えている場所にぶち当たった。
その密集している木々の間に入り込もうとすると、精霊王の為にと…自然に道が開けていく。
緑の木々の間から、時折零れ落ちてくる陽光を身体に浴びながら、ゆっくり歩いていく。
先程から聞こえてい来る音は…間隔をあけてだが、しっかりと耳に入ってくる。
その音が段々と大きくなってきたので、木々を抜けるとふっと目の前に大きな広い湖が飛びこんできた。
暫くはその広い湖を見渡していたが、あまりにも綺麗な湖に触れたくなり、そっと澄んだ水に手を触れてみる。
冷たいその感触に、自然と笑みが浮かぶ。
ふっと顔に影を感じたので顔を上げてみると、淡い水色の髪と同じ水色の瞳を持つ乙女が水面に現れていた。
彼女は湖の上に立ちながらも、先程の精霊達と同じように自分の目の前で跪き、両手を胸の前に当たると、口を開き、涼やかな声で話し始める。
『我等が精霊王よ…
貴方様がこの湖に触れなければ、私たち水の精霊は生まれることなど出来なかったでしょう…
心からお礼を申し上げます。
そして…新たに生まれる一族も、貴方様に感謝することでしょう…』
そう言って滑らかな白い手で湖面に触れると、新しい一族が増えていく。
生まれた精霊達はみな子供達で、精霊王の傍に行き、敬愛の意味を込めて、その手を取ると接吻た。
生まれ出た子供達の敬愛の仕草を受け止めていたが、彼は暫くすると其処から動き出す。
暫く歩いてると、草の広がる場所へと出た。
枯れ草の重なっているのをじっと見つめていると、それはボッと音を点てて、急に燃え上がる。
何故火が起きたのか判らず、呆然と燃え上がる様を見つめていると、パチパチと火の爆ぜる音と共に、精霊の姿へと変わっていった。
燃えるような赤い髪と何もかも燃えつくしてしまいそうな強い瞳の精霊は、王の傍へと行くと跪く。
『…我等が王よ…
その瞳だけで炎を産めし精霊王よ…
その力により我等が生まれた…
感謝すると共に、一族を増やす。』
淡々とそれだけを言うと彼はすっと立ち上がり、手を振る事に炎が弾けて、次々に精霊達が生まれていった。
楽しそうに踊る精霊達を見つめて、楽しそうに見つめていた。
それぞれに住み場所があるのに、自分にはその住むべき場所が無い…
そう気付いた時に、王はその精霊達が居る場所から離れた。
自分が住みに相応しい場所を探すために…
それ程時間がかからないうちに、王は自分が住まうべき場所を見つけた。
誰も来ない高く広い空にある雲の上に降り立ち、一番大きな雲で城を作った。
雲で出来たとは思えない程、立派な城に精霊王は満足げに頷く。
そうして精霊達が増えていくのを空から眺め見つめて、精霊達が元の姿に戻るときも、ただ見つめ続けていた…
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
ゆっくりと更新していきたいと思います。