第7話:居酒屋
更新遅れてすいません、いろいろと忙しかったので。
よろしければコメント等いただけるととてもありがたいです。
それでは第7話お楽しみください。
居酒屋『和』
和風料理とわいわいと騒げるようにということでこの名前がついたというのを先日大学院の先輩から聞いた。
そこは居酒屋というよりは飲食店といったほうがいいほどに落ち着いた感じの店だった。
ゆっくりと店内を見回すと奥のほうからお上さんがでてきた。
『室生君こんばんわいらっしゃい』
『西さんこんばんわ』
よく見ると西さんはなぜか浴衣姿だった。
先週までは確かに割烹着姿でいかにも居酒屋のお上という感じだったのに・・・またかと思った。
『また変わったんですか?』
『もちろん!やっぱり同じだと飽きられるからね!これお気に入りなの』
浴衣の袖を持ち、みせてくる。確か、割烹着のときも同じことを言われた。
何も知らない結衣だけがキョトンとしている。
僕はそれに気が付き急いで説明した。
『ここね、うちの研究室の飲み会でよく使わせてもらってるんだよ。この人は西さんっていってここの女将さんなんだ。』
いつもご贔屓にしていただいてますと西さんは頭をさげた。
『すっごい綺麗な人だけど、彼女?』
と西さんは僕の腕を小突いた。
『あたらずしも遠からずっていうところでしょうかね』
変な説明をすると突っ込まれるので適当に答えておいた。
『なにそれ、もしかして婚約者とか!?』
西さんは更に小突いてきた。
結依はちょっと顔を赤くしていた。
西さんは20代後半ということを聞いてはいるが大学生と同じとしか思えないほど気さくな人だ。むしろ、僕よりも年下と思えるぐらいだ。一応常連さんには看板女将と呼ばれるほど人気があるらしい。
『いいから席に案内してください。こっちは客なんですから』
『はいはい、詰まんない男ねぇ』
西さんは僕たちを席に案内して注文きまったら呼んでねと入店してきた客の元へいき浴衣姿を自慢していた。
『変わった人なのね』
結衣はお客さんと話している西さんを見てつぶやいた。
『いや、コスプレが好きなだけみたいだよ。いろいろ変わるからそれだけを見に飲みに来るって人も結構いるみたい』
猫、メイド服、婦警、その他もろもろ本当にいろんな姿をみたが、似合っているのだから誰も文句を言わない。唯一、店の亭主だけが苦笑いをしていた。
『そうなんだ・・・あっ注文しよ!』
僕と結依はメニューをみて注文するものを話し合った。まずはビールってことで生中二つにおつまみに3,4品を注文した。
『『かんぱ〜い』』
コツンと中ジョッキを合わせた。
『えっと・・・誘ってくれてありがとう。私こんな風に誘ってもらえないと男の人と関わるっていう機会がないから』
モジモジとして少し顔を赤くしている。
『こちらこそ、来てくれてありがとう』
結依が男の人と関わる機会がない?ばかな・・・こんなに綺麗なのに誘われることがないのだろうか。
でも、確かに考えてみると歯医者で人を誘おうなんか思うやつ俺以外いないよな・・・(笑)
合コンでもやれば別だけども・・・。
『ってことは彼氏は?』
『いるよ』
『え!?』
『うっそ〜』
結依は舌をちろっと出して笑った。
『ほんとは高校3年から全然なんだ〜恋愛運なくって』
と結依はビールをクイっと飲んだ。
フリー確定ということが分かり心の中でガッツポーズをした。
『そういう晃くんはどうなのよ、さっきは人を彼女にするし2股?』
少し怒ったような顔をしているが顔がどことなく赤い。
『2股なんてできるほど器量がないです。彼女は大学に入ってからは全然ですね。これっていう人がいなくって』
ふ〜んと中ジョッキを空にした。
飲むペースが速い。僕はまだ半分しか空いてないのに。
『次何飲みます?ここカクテル、日本酒、洋酒、サワーとか色んなのあるんですよ〜』
『ワインがいい!』
西さんにワインを注文すると1本2000円ぐらいのテーブルワインをもってきた。
『これ安いけど飲みやすいのよ!』
西さんはソムリエみたいに少し味見をする。
『うまい!』
『そうやって客のばっか飲んでると旦那さんに怒られますよ?』
西さんは腰に手をあて
『飲みたいから飲む!それでいいじゃない!』
周りからはそうだそうだという声が飛んだ。
『お〜い、はやく料理運んでくれ』
『は〜い、ただいま〜』
それじゃと厨房の方へと消えた。
いつもああなんですよと僕は結衣に笑いかけた。
『楽しい人ね〜、これおいしぃ〜』
結衣は少し酔いが回ってきたのかほほを少し朱色に染めている。
僕も少しワインをもらって飲んでみたがとても飲みやすくグイグイいけた。
『お酒強いんですか?』
『ううん、弱いよ。いつもはビールコップ1杯でベロベロに酔っ払っちゃうの』
『え・・・そんなワインとかそんなに飲んで大丈夫ですか?』
結衣は意地悪そうに笑い。こういった
『敬語直したら教えてあげてもいいよ。私敬語嫌なのよね、あなたぐらいは普通にしゃべって』
綺麗な人が上目遣いで目をうるうるさせほほを朱色に染められたら、誰も逆らえないと思う・・・。
『わかった・・・』
よろしいと結衣は満足そうに笑い、ワインをグイっと飲んだ。
『実はぁ・・・もうよっはらってきてるよぉ〜』
すでに呂律が回ってないようだった。
それから30分ぐらいいろんなことを話しながらお酒を飲んだ。
結衣の高校、専門学校時代の話や僕の高校の話などを話していたが
結衣が目を閉じうとうととしているのに気がついた。
『結衣さん、大丈夫?』
こうしてみると結衣はとてもきれいだと改めて実感した。なんていうんだろう。何気ないしぐさでも彼女がやると見入ってしまい目が離せなくなってしまう。彼女の魔法だろうか。
ゆっくりと結衣は目をあけて
『さんはなしでしょあきら!』
『はい!?』
ビクッと大きな声で返事をしたので周りにクスクスと笑われてしまった。
次の言葉を待っていると彼女は自分の腕の上に顔をのせて気持ちよさそうに寝てしまったようだ。
『あちゃ〜寝ちゃってるね』
西さんはいつの間にかテーブルのとなりにたっていた。とニヤニヤして僕をみてきた。
『お持ち帰りかい?』
『なっ!?』
なにもいわずに口をぱくぱくさせていると
『せいぜいがんばりなよ、これ会計ね』
西さんにお金を払い、結衣を背負って店をでた。
西さんどころか、主人までニヤニヤしていた。
どうしよう・・・。話しかけてもうぅんと悩ましげな反応しかしないし・・・。
結衣の家は知らないし・・・しょうがなく自分のアパートに結衣を運ぶことにした。
健全な男なら女の人を背負ったらそこに集中するわけで、僕も例外ではなくそこに集中してしまう。それに手は素肌に触れてしまっている。
とてもすべすべだった・・・。ってただの変態か。
アパートに着き、鍵を開けて入った。
結衣のリボンパンプスを脱がし部屋に入る。ベットに寝かせた。カーディガンを脱がせハンガーにかけ、布団をかけるとなにやらシアワセそうな寝言を言った。
『楽しかった』
フッと笑みが漏れ彼女の頭をなでた。
『また、どこか飲みにいこうね』
彼女は意識がないはずなのにこくっとうなずいた気がする。
きっと気のせいだろう。
押入れから毛布を出しソファに横になった。結衣が寝返りをうち顔がソファのほうへ向いた。
長い睫毛だなぁ・・・それに綺麗だし・・・なんで僕なんかとという疑問が浮かんだ。
そんなことを考えながらしばらく、結衣の横顔を見ていたが酒も回っていたのでまぶたが重くなり・・・寝た。
結衣がうっすらを目を開けて様子を伺っていたのには気がつくはずもなかった。