第6話:デート
『はぁ…緊張するなぁ』
そこは何処にでもあるようなコンビニの雑誌ブース
雑誌を手に取り先程から腕時計をチラチラと見ている。
どうみても待ち合わせの男だろう。
こうなったのには訳がある。
☆
起きると結衣からメールが入っていた。
『おはよぉ!いいよ〜☆場所は任せるよ。楽しませてね』
なんのことだろう…
昨日送ったメールを見て愕然とした。
『おやすみなさい!!よかったらなんですけど…今度飲みにでも行きましょう!』
頭を抱えた。
奥手な僕がなんてこと送ったんだろう…
そりゃ今まで人並みに付き合ってきたし、あっちの体験だって結構あると思う。
でも、それは全部相手から言われてそういった行動をした訳で、自分から誘うっていうことは無かった。
いつも相手に合わせて嫌われないように、ただただ付き合っていた。いや、付き合ってたというよりは単なる仲の良いセフレという表現が1番ピンとくるかもしれない。
そんな付き合いだから別れもはやく、今まで本気になったということが無かった。
そんな自分が…自分の意思で行動する。
僕は結衣のおかげで変わって行くのかもしれない。
この時はそんな風にしか感じていなかったけど…本当に劇的に変えられるなんて思ってもなかったんだ。
それからは適当に時間を指定した。
昨日の電話で土曜も仕事だと聞いたので。確認をとるとその後ならいいと返事が返ってきた。
そして話は冒頭にもどる。
『はぁ…』
もう一度ため息をつくと後ろから不意に声がかけられる。
『ため息なんてついてどうしたの?』
佐藤愛だった。
『なんでここに?』
『あんたばか?買い物に決まってんでしょ』
荒っぽい言い方だ。愛は一言でいうと男勝りな性格だ、ついでにアニメヲタクだ。
『まぁ、そうだよね』
曖昧に返事をした。
『それはそうと…あんたは何してるのよ?』
『ちょっと待ち合わせだよ』
ははーんと愛はにやりとした。
『さては女だな、この時間ってことは朝帰りだね』
『なっ…そんなことあるわけないって』
こんなに慌てたら否定した意味がない
『ふぅん、相手は誰?私が知ってる人?』
『しらないと思うよ』
『見ていこっと』
『別にいいよ、自信無くさないようにね』
一人の女性がコンビニに入って来た。段々とこちらに向かってくる。
『なんで私が自信無くすのさ』
愛は目を点にしてみてきた。
その目が後ろの女性に向く。
その視線の方へ目を向けるとそこには彼女がいた。
『晃くん、お待たせ』
仕事帰りなので格好がOL風と思いきや、一度家に帰ったのか薄い水色のワンピースに淡いピンク色のカーディガンを羽織っている。
装飾品などなにもつけていないがとても華があった。
『いや、別に待ってないよ』
お決まりのことをいうと僕の後ろに視線がいった。
『晃くんのお友達かな?』
『佐藤愛っていいます、晃くんは大学の同級生で…びっくりしたぁ。晃のいったことがわかったな…たしかにこれは自信なくすね』
愛はマジマジと結衣を見る。
結衣は困ったような顔をして晃に助けを求めた。
『愛あんまりみるな、結衣さんが困ってる』
『いや、だってねぇ。こんな綺麗な人みたことないし…何処で捕まえたんだか』
そんな愛に内緒と言い腕時計をみると予約した時間になりそうだったので愛とおさらばすることにした。
『もう行こう結衣さん、こいつにかまってると時間無くなるから。それじゃあな』
別れ際に愛はとんでもないことを言った
『お楽しみに!ゴムはつけるんだよ!』
というので僕はおもいっきり吹き出してしまった。結衣をみると茹で上がったタコのように赤くなっていた。
少し話ながら歩いていると結衣はふと思い付いたように言った。
『車置いて来たから』
話を聞くと結衣のアパートと僕のアパートは場所が近く、今日予約した店も割と近かったため歩きにしようとなったのだ。
なによりの理由が
『せっかく飲もうって誘われたのに飲まないなんて失礼じゃない』
だそうだ。
5分ほど歩くとお店についた。
☆
一方その頃愛は誰かに電話をかけていた
『皐月皐月きいてよ!』
『なぁに〜?』
『晃のやつがさ、女できたみたいなの!!』
『えぇっ!?』
『今見たんだけど絶世の美女って感じだったよ!!』
『ど、どうしよう…』
二人の話はこの後30分も続いたという。