第4話:電話【前】
携帯を見つめる。
一年前に買ったものだがいまだに傷一つない。
これにはわけがあって、前の携帯のときに扱いが酷く傷だらけになり、それを親に見つかり思いっ切り怒られたのだ。
携帯を投げて壁にぶつけたり、道に落としたり…こんなことをしていたら傷だらけになるのは当たり前か(笑)
こんな扱いするならもう買ってやらないと言われて以来大事に扱うようにした。
今僕は迷っている。
時刻は8時
辺りは暗く空には満点の星空
おそらく彼女は仕事も終わり家かアパートでゆっくりとしていることだろう。
彼氏といるのかな?
一瞬悪い予感がよぎったがおばさんのコトバを思い出し、すぐに消え去った。
『あんなに楽しそうに話してる結衣ちゃんみるの初めて見たわ』
普段は冷たい人なのかな?それとも…
そんなことを考えていると携帯が鳴った。
『うわっ!?』
僕はびっくりして携帯を手放してしまった。
画面を見ると皐月と表示されている。
山中皐月大学の女友達で麻生宗則、佐藤愛と僕の四人でよく飲み会をする。
不思議なことにみんな恋愛対象ではない愛には年上の彼氏がいるし、皐月と宗則は最近くっつけようと努力しているが今だなんの成果もない。
『…もしもし』
恐る恐る電話に出てみる。
『もっしもぉ〜し』
耳がキーンとなるほどの大きな声がかけられる。
『うるさい!』
『あはは〜いいじゃん♪』
悪びれる様子もなく笑っている。なにやら後ろの方ではがやがやとうるさい。
『全く、びっくりさせんなよな〜今どこいんの?』
『今はみんなと飲み会ですよ!室生晃くんにもメールしたんですけどねぇ!』
ろれつがまわってない…どうやら酔っているみたいだ。
言われてみると歯医者から帰ってきたときにメールが来ていたのを思い出した。
『あ〜ごめんな、忘れてたわ』
『ぐすっ…そうやって私を捨てるのね』と泣き真似をしている。
『まてまてまて!』
皐月は酒を飲むと絡むというめんどくさい性格の持ち主だ。これは適当な理由いって切った方がいいな…
『今めんどくさいとか思ったでしょ』
『!』
『どぉ〜せ、私はめんどくさいですよぉ!あ〜むねのりぃあきらがいじめたぁ…』
この声を最後に電話が切れた。
『はぁ…これだから皐月は苦手だ。これがなきゃいい人なのにな』
うんざりしてるとまた携帯が鳴った。
画面をみるとみたことがない番号からだった。
『もしもし』
『…………』
しばらく待ってみたが反応がないので名前を言ってみる
『…もしもし室生晃ですけど、どちらさまですか?』
『……………もしもし』
彼女だ。この声忘れるわけがない。