新たな脅威
白いスーツを着た男。
こいつは一体誰なんだ。
俺が疑問に思っていると白スーツの男は俺に話しかけてきた。
「誰だお前?ここで何してんだ?」
しまった。人に見られた時の言い訳を考えていなかった。マスクを身に付け、刀を持っている俺は明らかに不審者すぎる。
正直に【イーバヤ星人】の事を言っても信じてもらえないだろうしな。
「ここに入居してた人が何者かに襲われていて
俺は助けようとここに来たんです!時期に警察も来ると思うので安心してください。」
咄嗟に考えて出た言葉だったけど
別に嘘はついてないよな。
これで納得してくれればいいけど……
そう思っていると突然、俺の視界がグルグルと回りだした。
気づくと顔面に殴られたような痛みが走り出し
俺の身体が宙に浮いて吹っ飛ばされていた。
俺はそのまま地面にうつ伏せで倒れ込んだ。
一体何が起きたのか全く理解ができない俺を無視して
白スーツの男はさっき戦っていた部屋の中を覗いている。
「チッ。これお前がやったのか?」
立ち上がった俺は、白スーツの男から物凄い圧力を感じ恐怖を隠せず生まれたての子鹿のように震えていた。そしてコイツはただ者ではないと理解した。
ただ、見た目はこれまで見てきた【イーバヤ星人】の特徴を持っておらず
人間なのか、別の何かなのか俺は分からなかった。
「あんた,……何者だ?」
白スーツの男は身に付けていたサングラスをゆっくり外している。
「そうか、廃墟で暴れたのもお前か。」
サングラスを外した目は、【イーバヤ星人】が持つ白目がない真っ黒な目と同じだった。
この威圧感。
そして特徴的な目。
俺はこの男の正体を察した。
「っ!?ダイくん。逃げてください!今目の前にいるのは、【ランク2】の【イーバヤ星人】です!」
俺は、初めて会った【ランク2】を目の前にして
絶対に勝てない事を悟っていた。
たが、この状況で逃げ切れる保証はないし
逃げる選択肢も俺にはなかった。
俺が逃げてコイツを野放しにすればまた同じような
被害が起きると思ったからだ。
俺は無謀だと分かっていながら、白スーツの【イーバヤ星人】へ斬りかかりにいく。
「うあぁーー!!」
間合いを詰め、白スーツの【イーバヤ星人】に刀を振ったが刃が通らず切る事は愚か、傷一つもつかなかった。
俺が呆気に取られていると
白スーツの【イーバヤ星人】は俺首を掴んだ。
「俺の攻撃を喰らったのに立ち上がり
そして、今の攻撃の速さ。お前、人間か?」
白スーツの【イーバヤ星人】は俺を地面へ叩きつけ
そして踏みつけた。
「【イーバヤ星人】の存在は知ってるみたいだな。お前さっき俺に何者かと聞いたな、冥土の土産ってやつだ教えてやるよ。俺は【ランク2】のボローネだ。」
踏みつけは以前として続いたまま白スーツの【イーバヤ星人】が俺に名乗る。
「お前の質問に答えたんだ、お前も答えろ。
お前は誰だ?なぜ【イーバヤ星人】を知ってる?目的はなんだ?」
踏みつけている俺を今にも殺しかねないほどに
ボローネの威圧は一段と強くなっていったが
俺は【グレジタンス】の事を話す気はなかった。
もし俺がここで死んでも【グレジタンス】の人達が何とかしてくれると信じていたからだ。
「お前に話すことは何もない……」
俺はボローネを下から睨みつけた。
「そうか、なら死ね」
ボローネに俺の威圧は全く通じておらず
何の躊躇いもなく俺を踏み殺そうとしている。
俺の人生はここで終わるんだ。
23年間。別の世界に来ても何も成し遂げられず
終わって行くのか。
まぁ、俺らしくていいかもな。
そんな事を思いながら俺の意識は遠くなっていった。
「動くな!両手を上げて背中をこちらに向け大人しくしろ!」
声のする方を見ると警官が二人とスーツを着た人達がそこにはいた。
「運がいいなお前。次会ったらお前を殺してやる」
ボローネはそう言い、目で追えないスピードで窓から外へ逃げて行った。
警官とスーツの人達は俺に駆け寄り何か声をかけている。何を言っているのかわからないまま意識が途切れ
気づくと病室のような部屋で俺はベッドに寝ていた。
目が覚めた事に気づいた医者らしき人が誰かに連絡をして、直ぐにイチキさんとミエさんが来てくれた。
「イチキさん……ミエさん……」
「良かった……安心してください。ここは【グレジタンス】本部です。ダイくんは2日間も生死を彷徨っていたんですよ。」
2日間も俺は目を覚まさなかったのか。
ミエさんは心配の表情を浮かべながら俺を見ている。
普通の人の数十倍も治癒力がある俺が2日間も生死を彷徨っていたって事は相当酷くやられたんだな。
ボローネが言ったとおり、俺は運が良かっただけだ。
【ランク1】を倒してこれたから自分の実力を驕っていた。
「イチキさん、ミエさん。俺、この任務で自分が何の役にも立たないことを実感しました。【グレジタンス】のためにこの先やっていけるかどうか……」
俺はこれまでまともに任務を遂行したことがない。
人間を【イーバヤ星人】から守るどころか
俺が死にかける始末。
【グレジタンス】の人の為に戦うなんて図々しいにも程がある。
今回の任務で俺は自分の無力さを知りこれ以上他の人に迷惑をかけるのが怖くなっていた。
「結果がどうであれ、ダイくんは、私たちやこの世界の為に命をかけて戦ってくれている。そんなダイくんを私は【グレジタンス】のメンバーとして誇りに思っています。」
「私も!ダイくんはめっちゃよくやってくれてるよ!
私もダイくんの為に強くなる特訓とか付き合うからさ
元気出してこ!」
こんな俺に2人はとても優しかった。
今までの人生を振り返ってみて、こんなに優しくされたのなんて久しぶりだ。
俺はこの世界に来てよかったと思えた。
「ありがとうございます……イチキさん、ミエさん。
俺、もっと頑張ります。」
2人は俺を見て温かく笑った。
「まぁ今は、その身体の怪我治す事が優先ね!」
この先俺はもっともっと強くなる。そう覚悟が決まった瞬間だった。
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