Episode.15 信の裂け目・中編
神州維新府「外児育成計画」正規報告書(AL-解析出力版)
一、計画概要
本計画「外児育成計画(Outchildren Project)」は、外界にて保護収容せし霊統因子との適合を看取せし五歳以下の幼子を選抜し、育成過程を通じてその適応挙動を解析し、戦将としての戦力化を目的とせる一連の施策なり。
本計画の最終目標は、適合被験体の人格形成・価値志向・行動様式の推移を観察・記録し、恒常的戦力供給体制の確立に資する知見を得ることにあり。
二、被験体別育成環境と比較
計画の遂行に際し、育成条件を異にする三種の環境を設定し、各被験体を配し、経時的変化を記録す。
被験体α(第一個体)/個体識別名:綾瀬蓮
→ 神州維新府管理下施設にて集団生活環境を構築し、標準教育および基本任務訓練を施す。
被験体β(第二個体)/個体識別名:伏見瑛
→ 人的干渉の最小化を旨とし、通常家庭に準拠する仮想家族構造下にて育成す。
被験体γ(第三個体)/個体識別名:神城崇真
→ 戦将現役者の家庭環境に準ずる設定を採用し、育成課程に移行す。
三、被験体育成過程に関する特記事項
被験体γ(個体識別名:神城崇真)は、育成初期段階において、戦将という存在形象に対し顕著なる関心を示せり。これは現役戦将が身近にある環境の影響と推察せらる。
当初の計画指針においては、該関心は予測されざる挙動にして、育成手順に於いては特段の肯定介入を行わず、むしろ間接的否定的対応を選択す。
然るに、該方針が被験体の内在的欲求を刺激し、かえって戦将的価値観への執着を深化せしめ、結果として予定よりも早期に人格傾向の定着を確認す。
最終育成段階において、被験体γは戦将基準に準拠する判断力・精神安定性・戦術遂行能力を安定的に示し、計画における第一成果事例と認定せらる。
一方、被験体α(個体識別名:綾瀬蓮)は、育成段階において環境順応を過度に優先し、当初は集団内における協調的傾向を示したるも、戦将たる道への指向を看取されず、戦闘適性ならびに独立判断力の形成に著しき遅延が生じた。
また、被験体β(個体識別名:伏見瑛)は、擬似家庭環境において一定の安定性を示したるも、戦将たる規範的資質への関心を得るに至らず、外的刺激に対する応答性に乏しく、その育成効果は認め難し。
両個体は、計画の第一段階終了時において戦力化困難と判断され、観察対象より除外された。これは霊統因子の不適合を意味するものではなく、育成環境が戦将としての資質形成に与える影響の差違を示すものと結論す。
四、今後の展望
本件を以て「外児育成計画」における育成環境差異の影響に関する初期検証は一応の成果を得たり。
今後は、被験体γに見られし人格傾向誘導型育成モデルを基軸とし、より適切なる適合者選抜手法および育成過程の標準化を図る。
また、戦将戦力の安定供給体制構築に向け、本モデルの全域展開を視野に入れた応用実験段階への移行が提言される。
備考:
本報告書は、正規日本語第七式に準拠し、AL-整形型自動言語出力機「式部三号」により再構成されたものなり。
本AIは、過去に収録された一系統の言語規範(出典:Y.SHOIN)を基礎学習データとせり。
同規範は内容的思想とは無関係に、表記・構文・語義の精度に基づき選定されたものなり。