おやじさんからの情報
その後ろ姿をみんなで見送りながら、A班の男たちは納得しあう。
「あれが、アランにきいた『オリビア』?」
ザックはとなりのケンの顔をみた。
「どう見てもそうだろ。このレストランで働いてる若い女っていうんだから」
興味なさそうに下にある港をながめこたえるケンは、サングラスをとって海をながめた。
「まあ、情報どおり、意見のはっきりした女性ではあるね」
ルイが店の中でほかの客と楽し気に会話をするオリビアをゆびさし、すこし思い込みははげしそうだけど、とつけたす。
「それで、あのひとがマリオの行方をしってると、アランはおもってるんだろ?」
「いや。アランというか、マリオの親父さんはそう思ってるから、そのままアランに伝えたんだろうな」 ザックにジャンがこたえると、確証はないんだろ?とケンがにやけた顔でつけたす。
アランがきのう、《とっておきのレストラン》でA班に頼んだのは、半年以上前から帰ってこないマルコの息子のゆくえをつきとめるのを、てつだってほしいというものだった。
「でもさあ、もしおやじさんが考えてるとおり、オリビアにそそのかされて島を出て行ったなら、オリビアもこの島を出て行くんじゃねえの?」
ザックが飲み干したグラスをものたりなさそうにゆする。
「おれもそうおもった」
ジャンも納得しかねるように首をまげる。
「だいたい、この島でマリオをどこかに誘うようなのが、彼女しかいないって親父さんが思い込んでるふしがあるよね。新しくきたよそ者を疑いたいのはわかるけど」
ルイも困ったような顔でジャンをみる。
「じゃあ、べつのほうも見にいってみるか」
ケンがサングラスをかけなおして立ち上がったが、まあ待て、とジャンにとめられる。
「オリビアが持ってくるワインをたしかめてからにしよう」なぜかルイと顔をみあわせてわらいあっている。
「なんだよ。彼女が注文を間違いそうだと思ってんの?」
ザックがにやけあうふたりをみくらべ、もしかして何か意地の悪い注文をしたのかと眉をよせきいたとき、むこうからグラスを二つ片手にぶらさげたオリビアが、もう片手でワイン瓶の首を、しめあげてつかむような恰好でやってきた。




