表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/38

出て行った息子

 ここでザックはちょっとレイのことをみた。

 

 もしかして、アランはこの店のことをレイに頼みたくてつれてきたのかも、と思ったののだが、「 ―― だから、そのかわりに、おれができることをひきうけたんだ」と、アランがすこし重々しくうなずいた。


「『できること』って、なにかをさがすわけ?」


 ザックがおもいついた質問に、また『宝探し』かよ、ばかにしたような顔のケンが、取り皿をくれ、と手をのばす。レイが思い出したように立ち上がり、ケンが手をだすまえに料理を分け始める。テーブルにのった大皿からのいいにおいに、ザックの腹が鳴った。


 店のおやじは年季のいったエプロンで手をぬぐいながらマーシュをみた。

「・・・うちの息子を、アランがさがしてくれるっていうんだが・・・、きっとみつかってもあいつはもう帰ってこないだろう」


「そんなことないさ。マリオだってこの店のことをぜったい愛してるし、今回だって、ちょっと旅行のつもりで出かけてるだけかもしれないだろう?」


「ちょっとの旅行で半年以上なんの連絡もなしか?」


「そりゃ、 ―― 出て行き方が家出みたいだったんで、連絡しづらいんだ。伝言もなくてちょっとの荷物だけでいなくなるなんて。もう十代のガキじゃないんだから、それなりの覚悟もしてるさ。一年ぐらいは連絡しないつもりなんだろ」

 マーシュがおやじのほうにからだをむけて気楽な調子でいってみせるが、おやじは首をふりながら厨房へと消えた。


「・・・えっと、ぼく、厨房を見学させてもらおうかな」

 レイが気遣うようにその背をおった。

「ケン、ザック、おまえたちはできあがった料理をここへ運べ」

 副班長サブチーフであるジャンの命令に、ザックは不服そうな顔のケンの肩をたたきたちあがった。

 うしろから、ジャンのわらいをふくんだ声がきこえてきた。

「 ―― で?それについて、おれたちに頼みたいことってのは?」


「え!?まだなにも言ってねえだろ? ―― いや、たしかに頼みたいことはあるが、なんでわかった?おれ、おまえらに会ったときから、そういう顔してたかな?」


 じぶんの顔を両手でおさえ驚く《探偵》の声をききながら、ザックもちょっと、アランのひとのよさは《探偵》にむいていないかも、と考えた。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ