いちばんうまい店
「あのなアラン、ザックはいま『世のなかを勉強中』の若者なんで、遠慮なく怒ってやってくれ」
ザックの横にすわったジャンが、ストローハットをザックの頭におきながら謝るように言い添えた。
だが探偵は首をふり、いやいいさ、とザックに眉をあげてみせる。
「島はせまいし、のどかなもんだから、ここのひとたちはおれのことを《探し物をする仕事をしてる》って感覚でいるんだ。でもそれって、まあ、だいたい当たってるよ。本島でうける仕事だって、浮気相手をさがしてくれ、とか、音信不通になったこどもをさがしてほしい、とかがほとんどだしな」
「でもさ、『幽霊船』での探し物なんてのも、たのまれたんだろ?」
ザックはストローハットをとなりの席におき、探偵に身をのりだした。
「だめ。そのはなしは、ノーコメント」
探偵のよこからわりこんだレイが、ザックににっこりしてみせる。
この話になるとレイの守りが堅くなるのをよく知るザックは、あきらめの意味でテーブルにあるコップに手をのばした。
このレストランのおすすめだという、レモネードだ。
店のおやじのばあちゃんが育ててるレモンなんだ、とマーシュは説明した。
「・・・すげえ、うまい・・・」
ザックの感想を、テーブルに料理を運んできた『店のおやじ』が耳にとめ、そうだろう?と肩をたたいてきた。だがその店主よりもさきにマーシュが得意げにくちをひらく。
「この店の料理はぜんぶ、そのばあちゃんの味なんだ。このおやじで三代目。そりゃ、この島にあるレストランはどこもそれぞれうまいし、レイにもそれを知ってほしくていろいろまわったけど、 ―― 正直、おれはこの店がこの島ではいちばんうまいと思ってる。観光客があんまりここまでこないから、昼飯の時間でもこうやってすぐテーブルにもつけるのも最高だ。おれとしては、この先もずっと店を引き継いでつづけてほしいんだが、・・・」
「おれでこの店もおわりだ」
マーシュのことばをひきついだおやじのあっけないことばに、レイがあげてしまった悲鳴をしまうように両手でくちをおさえた。それをみたマーシュは当然だというようにふかくうなずく。
「そりゃあ残念だな。なんならアランが引き継げばいいんじゃねえか?」
ジャンが冗談でもなさそうに提案する。
「できるもんなら、やってるが、残念ながらおれができる料理は黄身のくずれた目玉焼くらいだ」
こちらも冗談でもなさそうな答えが返る。