かわいい妹たち
暴力表現あり。ご注意を
「アラン、見たろう?エレノアはバケモノだったんだ。おれはあやうく喰われるところだった。 おまえ、銃か銛を持ってないか?できればあのバケモノをぶっころしてからここをでたほうがいいだろ。それをさがしに出たところだったんだ」
すっかり落ち着きをとりもどしたようにホセが首をかたむけほほえんだ。立てた親指を奥にむけ、『わかるだろう?』というように、にらんだザックにわらってみせる。
ザックが一歩出たときうしろから肩をつかまれて、ザックの代わりのようにルイがまえにでて、「おれ、いいものもってるよ」と、なにか白く細いものをだした。
それは、警備官が暴れてほしくない相手を拘束すときにつかう『結束コード』だった。
「なんだそりゃ?」
よくみようと顔をよせたとき、背後から思いきり頭をなぐられたホセは、アランへ突進するようにしてそのまま倒れた。
「 この男、ほんとに海の仲間に喰わせようか 」
倒れたホセの背中をふんで、オリビアがうんざりしたように凶器の石を床へほうった。
「ねえ、あんたたち、ほんとなんなの?いまの潮でこの島に着けるとか、エレノアみても驚かないとかさ。 ―― あと、あたしが石でこいつを殴ろうとするのもとめないし」
「だって、こいつのほうがどうみたって悪いじゃん」
ザックがホセをゆびさし言い切った。
「それになにしろ、おれたち警察官じゃないからね。法律には疎いんだ」
ルイがホセの脈を確認したジャンへ『結束コード』をわたす。
「それでも、暴力も監禁もよくないことぐらいわかるぜ。あ、あと窃盗か。ハープ、盗まれたんだろ?」驚いたことに、ケンが優しい声でエレノアをプールからひきあげてやっていた。
「ハープ?まあ、しかたないわね。もうあきらめさない、エレノア」オリビアは腰に手をやり、くびをふる。
「・・・ごめんなさい、オリビア」
あやまりながらケンに手足のロープをきってもらうエレノアは、はだしの足の先まで人間といっしょだった。
ほんとうに、さっきホセが言ってたように、エレノアは半魚人ってやつなのか?たしかにさっきの顔はすごかったけど・・・
ザックがそう考えたとき、オリビアが猫の眼のようにひかる目を男たちに向けた。
「 ―― ねえ、この島はいま、あたしたちの仲間でとりかこまれてるの。それに、あたしたちのかわいい妹たちはおなかがすごい空いてるから、あんたたち、ちょっと建物の上のほうにいてくれない? ねえ、かわいいオリビア、おみやげはこれしかないってみんなにつたえてちょうだい」いいかたは優しいが、その瞳の瞳孔が縦横にのびるのをくりかえし、まるで怒りだすのをおさえているかのようだった。
ジャンは了承の意味で片手をあげると、ホセを気にするアランの肩に腕をまわし、そのまま病院だった建物の方へむかった。ルイもザックの腕をつかみ、ケンはオリビアがホセをなぐった石をプールへ蹴りとばした。
「 明け方になったら、潮のながれもかわってるはずよ。そしたらもどっていいわ。 ききたいことがあったら、明日、あたしが働いてるレストランにきて」二本たてた指に唇をつけると、それをこちらへおくってみせた。
ザックは笑い返していいのかまよったが、とりあえず手をふった。
それでも明日、ホセのことをきくのはやめておこうとこころにきめた。
つぎの章で、すぐ終わります。




