白い厨房
病室のドアをひとつずつひらきながらみてゆくと、ベッドはあるがシーツもかけられていない。
「でも、ほこりは溜まってないんだよねえ」ルイがベッドの下を照らし確認した事実に、ジャンが聞こえないふりをする。
つぎの曲がり角で、建物が突然きりかわっているのがわかった。
教会のような大きな建物のうしろには、様式が違う、白い石でつくられた平屋の建物がある。
「こっちにはなにもなかったぜ」
先に左側をまわってでてきていたケンが、平屋の手前で待っていた。
白い石の平屋は、よくみるといくつもの細い柱で支えられた低い屋根をもつ空間で、その中に、いきなり近代的な金属の扉をつけた、白い石膏ボードでつくられたような簡単な小屋がおさまっている。そのボードでできた壁の上の部分には横に長い窓があり、中から暗いあかりがもれていた。
「この建物って・・・厨房?」窓によったルイが背をのばして中をうかがう。
近代的な調理台やシンクがみえた。
「料理中かもな」ケンがザックににやけてみせる。
「・・・料理って、まさか・・・エレノアはそのためにホセを捕まえた?」じぶんで言って、ザックはぞっとした。
「まあ、たしかにホセは太ってきてたが、ずっと一緒だったんだぞ?なんでそんな急に喰いたくなったんだ?」アランは真顔で腕をくんだ。
「いや、 ―― もしかして、おれたちがここにくることになったのがいけなかったのかもなあ・・・」ジャンが腕をくみ、しかたないから入るか、とその小屋についた金属の扉を、うらめしそうに目でさした。
アランが代表するように前にでる。
ジャンが念のためというように、そのすぐ横につく。
扉にある大きなレバーに手をかけたとき、それが突然中からひらいた。




