相談を
8.
― お知らせします ―
「ホセとエレノアがいなくて、オリビアが店にいた?」アランは椅子から立ち上がり、すぐに助けに行こう、と警備官の男たちをみまわした。
「どこに?」
「おれが間違ってた。こうなると、エレノアとオリビアは仲間なのかもしれないな」
「なにの?」
まったく動こうとしない男たちを代表して、ジャンがきくのに、アランはくやしそうにこぶしをにぎり、それはわからねえけど、と言葉をさがして、「とにかく、あやしいだろ。島の男がまた行方不明になったんだ」と怒ったようにまた椅子にすわった。
警備官たちはこの《貴族の別荘》にある居間が気に入ってるようで、だれも動こうとしない。ジュリアとレイは今日、ずっといっしょに過ごし、夕食はマルコの店でとるので、A班の男たちは自分たちでつくって食べるように言われている。
「あのさあ」とルイがのんびりしたききかたで、このあたりの人魚の伝説しってる?といきなり確認し、アランが「にんぎょお?」とおかしな発音でかえす。
居心地のいい居間の揺り椅子でくつろぐ男は、ニコル夫妻がおきにいりだったソファをひとりで占領する副班長に、アランには話してないの?と顔をむけた。
「なにをだよ?」
聞き返したのはアランではなくザックだった。
「そういや、ケン、おまえ、ここにくるのにジャンになにか相談してたろ?」おもいだしたザックは、あれなんのことだったんだよ、ケンをみた。
「ああ、このあたりって《人魚》に喰われた船乗りのはなしとかがいまだにあるから、旅行として行く先を、本島から一番近い島に変更したほうがいいのか、いちおう相談しといたんだ」
「そうなんだ。《あの》ケンがそんなことをおれに相談してくるなんて、ほんっと人って成長するんだな。おれはすぐにルイに相談した」ジャンはルイをみた。
「おれは、・・・いちおう父親に、相談してみた」
ルイがすこし恥ずかしそうにわらうのに、ザックは「まほっ」と声をだしてしまい、アランがいるので先をのみこんだ。
ルイの『父親』は、いわゆる『魔法使い』というひとで、なんだかおかしな力がある。そしてそのうえ、ワイン愛好家で、この世のワインの生産流通にひとやくかっているらしい。




