代償で友達
「あんたが、エレノアと友達?それとも、えっと、ホセの友達なの?」
ザックがじりじりと階段をのぼりはじめる。
「あたしは海に潜る代償としてエレノアの話し相手になってほしいってホセにいわれたから、友達になっただけ。でもあの女、ほんとなんだか怪しいよね。病院にはいる前のことはなにも覚えてないの一点張りでさ。それなのに、あたしとちがって島の男たちに歓迎されて、こんないい家で好きに暮らせて」
「きみは、なんの研究者なのかな?」
ルイがザックをひきとめながらオリビアに質問した。
大きなため息とともに、そのライトやめてくんない?と女は顔を手でかくす。
「ああ、わるい。 ホセのお隣さんが、ここにいなくなった猫がいるかもしれないっていうんで、ちょっとみんなでさがしてみようかってことになってさ。ところが店がこのところ閉まったままだっていうんで、心配になってつい」ジャンは懐中電灯をポケットにしまう。
「『つい』、不法侵入した?この島に警察官がいなくてよかったわね」
階段をおりてきたオリビアは、ホセたちはいないわよ、と二階をしめす。
「 あたしも店が開いてないってきいて三日前にも来たんだけど、そのときからいないわ」
たちはだかる男たちのあいだをぬけ、おんなは店のほうへ歩き出す。
「ふたりとも?そりゃ心配だな」
ジャンはみおくるように声をかけた。




