アランからの情報
5.
― 手伝い 情報その3 ―
「 その、病院からにげてきたっていうエレノアっていう女があやしいと、おれは思ってるんだ」
アランはA班の男たちをあいてに、《貴族の別荘》につくられた中庭にある椅子にゆったりとくつろぎ、そうきりだした。
《貴族》を先祖に持つジュリアの家の、その中庭は、宿として客を泊めている部分と、彼女が暮らす部分がむかいあったところにあり、むかいあってつくられた半円型の花壇は、建物から一段ずつ低くなっていく。その一番低い部分には石がしかれ、食事やお茶をたのしむための金属製のテーブルと椅子がある。
《灯台守り》のところから場所をうつした五人の男たちはテーブル近くのアランを中心として、すきかってにちらばり座っている。
「 ―― おれがこの島にくるのは基本、春と秋だけなんだが、いつきても島の雰囲気はそれほど変わりないよ。ところが、その年の秋は港に着いた途端、男たちはなんだか浮かれたみたいな顔で、おれにホセの店に早く行けってすすめてくるし、どのレストランのおかみさんたちもくちをそろえて、ホセの店にいくなっていう。ホセの店になにがあるのかはみんな話さないから、そのまま《灯台守り》のところにいったら、トマスとエマが先をあらそって、『幽霊船』が女をおくりこんできたってはなしをはじめた」
春。
靄がたちこめた早朝に、その小舟は東のせまい砂浜にたどりついたのだという。