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DAY0-1

 株式会社エレメンタル。それが私が事務員として働いている職場だ。事業内容は千葉県印旛地方中心に行われる個人向けのタレント派遣。要はフラッシュモブの手伝いやら新規オープンの店舗のサクラやら。そんな賑やかしに人が必要な場所へエキストラを送る。そんなニッチな事業を展開していた。意外なことに需要はあるのだ。まぁ……。そうでなければこんな変わった事業が続いているわけはないのだけれど――。


 その後。私は逢川さんと少し談笑してから成田市内の自宅に戻った。今日は日曜日。なので帰り道はガラガラだった。いつもは平日の夕方に帰るので毎回渋滞に巻き込まれるのだ。だからこうして空いている国道五一号線は何となく新鮮に感じる。


「ただいまー」


 自宅のマンションに着くと私はそう言って自室のドアを開けた。するとすぐに「おかえり」という声が返ってきた。彼氏の健の声。いつ聞いてもいい声。この声を聞くだけで疲れが吹っ飛ぶ。そんなバカップルみたいなことを思った。


「遅くなってごめんねぇー。夕飯食べちゃったよね?」


「ううん。まだだよ。レイさんが帰って来てから一緒に食べようと思ってさ」


 健はそう言うとダイニングテーブルに視線を向けた。どうやら私のために夕飯を準備してくれていたらしい。


「えー! 作ってくれたの?」


「まぁね。たまには俺の料理ご馳走しようかなぁーって……。さ」


 健は照れた笑みを浮かべた。可愛い。可愛すぎるやろ。なんでこんな気の利く男子が私なんかの彼氏なんだろ。もっといい女山ほどいるだろうに……。と私は一瞬の間にそんな自虐的なことを思った。それくらい健はいい子なのだ。いい子……。まぁ二二歳の男子にその言い草もどうかと思うけれど。


 それから私たちは遅めの夕飯を食べた。クリームシチューとポテトサラダとバケット。そんな普段の私ならまず作らないような料理だ。


「うん。すごく美味しい!」


 私はシチューを一口食べると大げさなリアクションをした。実際すごく美味しい。本格的で家庭的なクリームシチューだと思う。


「なら良かったよ。結婚式で美味しいもの食べてきただろうから……。ってちょっと心配してたんだ。口に合うかなぁって」


 健はそう言うと嬉しそうに微笑んだ。そして「また機会があったら作るよ」と言った――。


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