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第97話 作戦会議(6)

 質疑応答が終わり、午後七時半に会議がお開きとなる。解散後、僕たちは何人かのS.G.Gメンバーに声をかけられた。


 オブシーンのこととか、AIFRSのこととか、学校のこととか。色々なことを聞かれた。みんなの反応からすると、やっぱり高校生でS.G.Gにいるのはかなり珍しいらしい。


 みんなと話しながら、スパークルや綾乃を憎んでいる人は少なそうで安心した。きっと僕たちや綾乃に過失がないことを分かってくれたのだろう。


 みんなとの話が終わると、すでに午後八時を過ぎていた。用事のないメンバーは続々と退出していたから、セミナー会場にはスパークルと小畑さんだけが残っている。


「いやぁ〜。思ったより、やいのやいの言われなくて良かったですねぇ」


 有城さんは目の前のデスクに突っ伏すように伸びをした。


「始まる前に有城さんから脅されたんで、大事にならなくってよかったですよ。……これも小畑さんのおかげですね」


 座ったまま、小畑さんの方を見て言う。小畑さんは立ちながらノートパソコンを操作しているところだった。


「これも俺の手腕のおかげだな」


 小畑さんはノートパソコンから顔を上げると、鼻高々にそう言った。


「とはいえ実際、お前たちに落ち度はないからな。意味のわからん理由でお前たちにキレるような馬鹿は捜索隊には入れてないんだよ」


 そう言って小畑さんがノートパソコンを閉じる。どうやら作業が終わったらしい。


「あれっ。小畑さんも、もう帰る感じですか? それじゃあ一緒にご飯でも行きません? ほらっ、今日は金曜日じゃないですかあ」


 有城さんがデスクから顔を上げて楽しそうに言う。小畑さんはそんな有城さんを一瞥すると、フンッと鼻を鳴らした。


「悪いが、これから別の仕事をする予定なんでね。飲みに行くなら、お前たち三人で行ってくれ」


 小畑さんが冷たく言い放つ。小畑さんがさっきから片瀬さんの方を見てないってことは、やっぱりまだ仲直りしていないのだろう。会議中には助け舟を出してたから、仲直りしたのかな、とも思ったんだけど。


「はぁ〜いっ。それじゃあ仕方ないから、三人で行きますかぁ」


 有城さんはもう一度伸びをすると「んしょっ」と言いながらゆっくり立ち上がった。


「マユさんとアキラくんも準備は大丈夫そう?」


 有城さんに言われて、僕と片瀬さんは頷いた。どうやら片瀬さんもご飯に付き合ってくれるらしい。


 三人でセミナー会場を出ようとしたときに、小畑さんが「そうそう」と声をかけてきた。


「明日の定例はスキップしよう。状況がまた変わって、やる意味がなくなったからな。アキラくんの方でも、まだ新しい店のピックアップは終わってないだろ?」


「あっ、そういえばそうですね。じゃあ次の定例は水曜日にしましょうか」


 僕は頷きながら言った。実際、新しいお店のピックアップはまだ半分も進んでいない。


「オーケー。じゃあそういうことで。……あぁ、あと。これから飯に行くなら、領収書はもらっておけよ」


「えっ、領収書ですか? ってことは――」


「やったぁ! 経費で美味しいモン食べられるぅ〜っ!」


 僕が言うより早く、有城さんが両手を挙げながらはしゃぎ出した。僕より歳上のくせに、こういう時はずいぶんと子どもっぽいな、と内心で笑う。


「寿司でも焼肉でも、好きなモン食ってこいよ」


 小畑さんが僕に微笑みかけてくる。嬉しい反面、ちょっと遠慮しまう。なにせ今日は別に何でもない日なのだ。


「でも、いいんですか? 経費の申請しちゃって」


「別にいいぜ。それにお前たち、美砂の歓迎会もやってないんだろ? その名目にしておけば大丈夫だ。経費で落ちるように経理部には言っておくから安心しな」


 言われて、そういえば有城さんの歓迎会をしていなかったな、と思い出す。ついこの間に有城さんから「歓迎会してないじゃん」と言われたけど、結局やるタイミングがなかった。


「それじゃあ……お言葉に甘えて。ありがとうございます」


 僕が頭を下げると、有城さんも後ろから「ありがとうございま〜すっ」と声を上げた。小畑さんは無言で手のひらを振っていた。


 スパークルの三人でエレベーターを降りる。本部の一階には誰もおらず、休憩スペースは閑散としていた。いつもは賑やかな本部がシーンと静まり返っていて、なんとも不思議な感覚に陥る。


「とりあえず、何食べるか決めましょっか。今日寒いんで、鍋はどうですか?」


 有城さんが休憩スペースのイスに腰を下ろす。


「いいですねぇ。でも有城さん、さっきもパスタ食べてましたよね? 鍋なんて食べれますか?」


「だいじょーぶ! さっきの会議で全部消化したからっ」


 有城さんがポンっと自分のお腹を叩いた。


「……さっきの会議、有城さん何かしてましたっけ?」


「うるっさいなぁーっ。細かい男はモテないよー? あっ、マユさんも鍋でいいですか?」


 有城さんが聞くと、片瀬さんは小さく「うん、大丈夫」とだけ答えた。随分と元気がないように見える。無理もない、片瀬さんは会議中、ずっと気を張っていたハズなのだから。

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