第7話 スーパー・サクラギ(2)
「二人ともすごいじゃない! お手柄だよ!」
万引き犯を警察に引き渡した後、片瀬さんは僕たちに向かって拍手をした。
「いやぁ、僕は何もしてないんですよ。もともとは綾乃が見つけたんで」
言いながら視線を送ると、綾乃はペコリと頭を下げた。
「そうなんだぁ~。駒崎さん現場ははじめてなのに、すごいね!」
いつになくテンションの高い片瀬さんが、綾乃のことを褒めちぎる。少し綾乃が羨ましくなりながらも、僕は言う。
「僕から見ても、綾乃はけっこう筋がいいですよ。これなら早めに現場に出てもらっても大丈夫だと思います」
「そうだねぇ。観察力もあるみたいだし、あとでアキラくんの番が終わったら現場に出てもらおうかな?」
などと言いながら、ゆっくりと僕に歩み寄ってくる片瀬さん。
「……それにしても、いつの間にか駒崎さんのことを名前で呼ぶようになったんだねぇ」
僕の耳元の近く。綾乃には聞こえないぐらいの声量で、片瀬さんは小さく囁いた。
「え、えぇ……まぁ。綾乃は同い年なので、なりゆきで……」
綾乃とはここのところ、毎日のように放課後に会っている。
平日の日中は片瀬さんも仕事で事務所にいないことが多いから、綾乃とは二人で話す機会が多い。そのため、自然のなりゆきでお互いのことを名前で呼び合うようになったのだ。
「ふぅ~ん……」
真横で、僕の瞳をじっとりと見つめる片瀬さん。
どうしたんだろう。まさか、チーム内での恋愛を警戒しているんだろうか?
たしかに三人しかいないのにチーム内恋愛に発展したら、やりにくくなるに違いない。仲違いすれば退職の可能性もあるし、片瀬さんが警戒するのも当然だろう。
「安心してくださいよ。別に、そういう関係じゃありませんから」
「ホントかなぁ~?」
いたずらっぽく笑ってみせる片瀬さん。
僕はまたも「本当ですよ」と念を押した。
「だったらいいけど。それじゃ次は"アキラくん"の番だから、よろしくね」
わざとらしく僕のことを名前で呼びながら、片瀬さんはそう言った。