第44話 オブシーンを捕まえろ(11)
結局、オブシーンの正体はマツダだった。
マツダ曰く、半年前から同様の手口で犯行に及んでいたのだという。キッカケは、Gメンの仕事中に女子高生から「なんでもするから、万引きを見逃してくれないか」と持ち込まれたことだった。
以降、マツダは女子中高生に卑猥なことをするために、S.G.G内のデータベースを漁りつつ、バレない手法を考えていく。
そして被害者の数が十人を超えようかというところでスーパー・サクラギの存在をデータベースで知り、ここでまた万引きをする女子中高生を探し始めたのだとか。
マツダもまさか、スーパー・サクラギがS.G.Gメンバーによって仕組まれた罠だとは思いもしなかったのだという。
ということは、僕たちの作戦が見事にハマったということだ。本来なら嬉しいことだけど、現に被害者が何人もいることを考えると、手放しでは喜べない。
「なぁ、マツダくん。キミの犯行が今回だけじゃないなら、被害者たちのためにも、ワタシはもみ消すワケにはいかない。捕まって罪を償わなければいけない」
桐生さんは言いながら、うなだれているマツダの肩を掴む。
「事件が報道されれば、ワタシもキミも、世間から大きなバッシングを受けるだろう。だが、決して腐っちゃイカン。調べたが、キミはひとりでBランクまで上がった優秀なGメンじゃあないか。罪を償ったら、またS.G.Gで働いて、世間に還元していけばいい」
――キミはただ、才能の使い方を間違えただけなのだから。桐生さんは最後にそう言った。
やがて警察がスーパー・サクラギに到着し、マツダが連行されていく。
「今回はご協力ありがとうございます。今回の捜査に携わった方皆さんも、参考人としてご同行願えますか?」
警察官のひとりが僕たちに言う。そっか、この場合は僕たちも警察に行かないといけないのか。
「はい、問題ありません。みんなも、大丈夫だよね?」
片瀬さんが警察官と話しつつ、僕たちに聞く。もちろん答えはイエスだったので、静かに頷く。
「うへぇ、華金に警察かぁ~」
髪をほどいた有城さんが分かりやすくうなだれる。まぁ警察に行った場合どれぐらいで帰れるか分からないから、その気持ちもわからなくない。
「そんなこと言わないの。全部終わったら、みんなでご飯でも行こ?」
そう言って片瀬さんが微笑む。公園で話したときから見せていた険しい表情は、もう消え去っていた。
「それならあたし、焼き肉がいいなぁ! 近くに二十四時間営業の焼き肉ある!」
有城さんがキャピキャピとはしゃぎだす。現金な人である。とてもさっきまで、丁寧にマツダと話していた人とは思えない。
「あっ、桐生さんもどうです? ご一緒します?」
有城さんが桐生さんに聞く。S.G.Gの代表が相手なのに、随分とラフに話しているのがすごい。
「いやぁ。ワタシは参考人でもないから、このまま帰らせていただくとするよ。あぁ、これを渡しておくから好きに食べなさい」
言うと、桐生さんが黒光りの高そうな財布から、一万円札を数枚取り出した。そして有城さんに手渡す。
「やりぃ! ありがたくいただきまーす!」
遠慮することなく、有城さんがその一万円札を受け取った。
「えっ、い、いいんですか?」
それを見た片瀬さんが、戸惑いながら桐生さんに尋ねる。
「ええよええよぉ。オブシーンを捕まえられたのは、キミらのおかげだからねぇ。次のランク考査の加点対象になるよう、事務にも伝えておくさ」
随分と気前のいい人である。S.G.Gという一大組織を率いているだけはある。お礼を言う片瀬さんに続いて、僕と綾乃も頭を下げた。




