第21話 昇格パーティ!(1)
スパークルがEランクに昇格することになったのは、高校も夏休みに入った七月末のことだった。
スーパー・サクラギでの一件をはじめ、ここ三か月でいろいろな実績を残した僕たちは、ついにGランクから脱却することができたのだ。
とはいっても、僕は入って四か月目だから、嬉しいけどそこまで感慨深いワケではない。でも三年以上ずっとGランクだった片瀬さんは、事務所でお祝いパーティをするぐらいには感慨深かったらしい。
そんなワケで僕たちスパークルの面々は、事務所でパーティをするために、準備でバタバタとしていた。
片瀬さんは食事担当、綾乃は飾り付け担当、僕は招待客担当と、それぞれ分担しながらお祝いパーティを進めていく。
「それにしてもEランクって、どれぐらいお給料増えるんですかねぇ」
招待客を担当しているとはいえ、僕の仕事は少ない。事務室で綾乃の手伝いをしていた僕は、作業しながら片瀬さんに聞いた。
「うーん、どうなんだろう。まだ分からないけど、とりあえず今の倍ぐらいにはなるんじゃないかな?」
デリバリー料理をテーブルに置きながら、片瀬さんは答えた。
「おおっ、結構上がりますね」
今の倍ってことは、およそ高校生のバイトとは思えない額をもらえることになる。特別何か欲しいものがあるワケではないけど、自分がそれだけ稼げる人間になっているというのは何か感慨深いものを感じる。
「そうだね~。さすがにまだ無理だけど、もうちょっとランクが上がったら、この事務所からも引っ越せるかもね」
そう言って片瀬さんはニコっと笑う。
……結局、片瀬さんと樋口琴乃さんの話をしたのは、あの日が最初で最後である。その話をした翌日はさすがに気まずい雰囲気があったけど、今はなんともなく普通に話せている。
「わたしはここの雰囲気、けっこう好きですけどね。ちょっと昭和な感じがして」
飾り付けをしながら、綾乃が言う。たしかに、良く言えば『昭和なレトロ感のある事務所』ではある。
「それにしても、もともとスパークルって片瀬さんだけでしたよね? よく本部は事務所貸し出してくれましたよね」
「なんか、もともとは別のチームの人たちが使ってた事務所なんだよね。そのチームが脱退するときに事務所が空いたんだけど、この狭さだとどこのチームも引き取ってくれなくて。それでなし崩し的に借りられたって感じなの」
「なるほど。そういうことなんですね」
なんてことをみんなで話していると、ポケットのスマホがブルブルと振動する。見ると、有城さんからのメッセージだった。「もうすぐ着くよー!」と可愛らしい絵文字付きで書いてある。
「有城さん、もう少しで着くみたいです」
「ん、わかった。この場所わかるかなー?」
「地図送ってるんで、たぶん。迷ったら向かいに行きますよ」
言いながら、有城さんにも返信する。
本来であれば、今回のお祝いパーティはサツキだけを呼ぶ予定だった。スパークルがEランクに上がれたのは、スーパー・サクラギでの一件が大きいし。何よりサツキとは、メンバー全員と仲がいい。
だから本当はサツキを含めた四人でパーティをする予定だったけど、公式サイトから情報を掴んだのか、いきなり有城さんが「お祝いしないのー?」と僕に送ってきたのである。
それを聞かれてはさすがに嘘もつけるはずがなく、今回のパーティに招待することになったのだ。
本当は小畑さんのブレイズに所属している有城さんを招待するつもりはなかったけど、片瀬さんも「有城さん呼びなよー」と言ってくれたし。そこまで気にしなくてもよさそうだった。
「でも意外だったなぁ。有城さんって、あんまりこういうパーティとかに来なさそうなイメージだったケド」
片瀬さんは、有城さんとはセキュリティコンサルの日に会ったっきりだ。だから有城さんの本性は知らない。
「前に話した感じだと、サツキに近い性格してますよ。仕事中は猫被ってるって言ってたんで」
「えー、そうなんだ。今日のパーティは騒がしくなりそうだねぇ」
片瀬さんは嬉しそうに笑顔を見せた。
「有城さんという方は、セキュリティコンサルタント専門なんですよね? いろいろとお話聞きたいですね」
綾乃は有城さんに興味津々、という感じだった。綾乃なりにセキュリティコンサルにも興味があるのだろう。
……ただ有城さんの性格からして、綾乃と絡ませると、とんでもないことになりそうな気がする。可愛い女の子とか好きそうだもんなぁ、有城さん。




