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第126話 ある可能性

 僕は復帰後、五つの店舗でGメンの活動をした。その間、病気の症状は出ていない。むしろ感覚が研ぎ澄まされていて、いつも以上の能力を発揮できていた。これも自分の中で、意識が変わったおかげかもしれない。本当、片瀬さんには感謝しかなかった。


 無事に完全復活を果たした僕は、再度デモニッシュ――黒木を捕まえるために、小畑さんと綾乃で作戦会議を進めていく。最初の議題は『あの日、僕が誤認逮捕をした高齢女性は黒木だったのか』だ。これについて、僕は休養期間中にずっと"ある可能性"と考えていた。その考えを二人に発表する。 


「僕が誤認逮捕をした女性は、デモニッシュだと思います。ですが黒木ではないんじゃないかな、と休養期間中に思いました」


 考えてみれば、おかしな話なのだ。あの日、高齢女性は大人しく事務室に入ってくれた。もし事務室の中で僕らが強硬手段――例えば身ぐるみを剥がすとか、そういうことをしていたら、黒木は詰んでいた。あの狡猾な黒木が、そんなリスキーなことをするハズがない。しかし僕を誤認逮捕に追い込んだあの高齢女性が、ただの一般人とも思えない。すると答えはひとつだ。


「おそらくデモニッシュのメンバーを、刺客として僕に送り込んだんだと思います。実際綾乃のときもそうだったワケですし」


 僕の意見に、小畑さんは納得したように頷いた。


「たしかに、その可能性は高いな。もし仮にメンバーが取り押さえられても、自分が捕まることはない。黒木の野郎がやりそうなことだ」


「でもここで、ひとつおかしなことに気付いたんです。黒木の目的はガーディアンを失脚させることです。それなのに、直接引導を渡すのは別のメンバー。これって、黒木にとっては物足りなくないですか?」


「……なるほど、その視点が抜けていたな。黒木は俺たちのことが憎い。そんな俺たちが誤認逮捕をして狼狽えてる姿なんて、是が非でも目に焼き付けたいハズだ」


「そうです。だから僕は思ったんです。僕と小畑さんが誤認逮捕をしてしまった、あの日。そこに黒木がいたんじゃないかって」


 小畑さんが息を飲む。突拍子もない考えを否定されると思ったけど、どうやら小畑さんは真実味があると考えてくれたようだ。


「綾乃的にはどうかな? 小畑さんと対峙したとき、お店に黒木はいなかった?」


 綾乃に問いかける。僕の考えが当たっているかどうかを確認するには、綾乃に聞くのが一番だった。なにせ綾乃は、実際に小畑さんを誤認逮捕に追い込んでいるんだから。


「どうだろ。わたしは指示されたことをしただけで、黒木勘五郎の動きまでは把握してなくって……。でも、アキラくんの考えはあってると思う。あの人の目的がガーディアンへの復讐だとしたら、討ち取ったところを直接見たいと思うハズだから」


 不確定とはいえ、綾乃からのお墨付きもいただいた。これで捜査がグッとやりやすくなった。僕と小畑さんが誤認逮捕をしたあの日、店に黒木がいた可能性があるのだから。


「もし俺たちの負けるところを直接見たいと思っても、それを駒崎くんたちには言わないだろう。言ってしまったら情報が洩れる可能性がある。メンバーにも秘匿にされていた可能性が高い」


 小畑さんが見解を述べる。その見解には僕も同意だった。黒木のことだから、綾乃たちが捕まった際のことも考えているハズだ。


「だがアキラくんのおかげで、一歩リードだな。あの日、あの店に黒木がいた。その前提で捜査をやり直そう。特に俺が駒崎くんを捕まえた店周辺の監視カメラは、そこまでチェックしていない。何かしらのヒントがあるかも分からん」


 こうして、またひとつデモニッシュ――黒木へと近づいた。最初に知ったときは、神出鬼没の窃盗集団だったデモニッシュ。その輪郭が、すぐそこまで迫ってきている。

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