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第12話 セキュリティ・コンサルタント(2)

 店の外に出ると、生暖かい空気が身体を包み込む。もうすっかり夏になっていて、夜でも少し汗ばむ気温になっている。


 僕はゴミ箱に空き缶を捨てると、少し伸びをする。今日一日の疲れがほぐれていく気になった。


 最近、平日は毎日のように放課後にS.G.Gの仕事をしているから少し疲れているのかもしれない。とはいえ、もう少しでランクの更新が行われる。働き次第ではGランクから一気に飛び級で昇格できる可能性もあるから、今が頑張り時だった。


 思えば、三か月前までの僕には、ここまで打ち込めるようなことはなかった。S.G.Gという新しい世界を教えてくれた片瀬さんには、本当に感謝しかない。


 ――もし昇格が決まったら、片瀬さんにも改めてお礼をしないとな。


 そう考えながらバックヤードに戻ろうとした時、後ろから足音が聞こえてきた。すでにスーパー・サクラギは閉店しているから、一般客がこの時間に敷地内に来ることはない。


 振り返ると、スーツを着た男女の二人組が歩いてくるのが見えた。


「君はここの店員かな? セキュリティコンサルで来た者だが」


 男の方が、僕に近づくなり訪ねてきた。どうやらこの二人組が、僕がワクワクして待っていたセキュリティコンサルの人らしい。


「あっ……いえ。僕もS.G.Gの者です。少し前から、ここの警備を担当していまして」


 僕が挨拶をして頭を下げると、男は驚いたように両目の見開いた。


「へぇ、驚いた。いまのS.G.Gには学生が増えているんだな。おい、お前と同じぐらいじゃないか?」


 男はそう言って、隣に立つポニーテールの女性に話かける。さっきは暗闇で分かりにくかったけど、女性の方は大人びてはいるものの同年代みたいだった。見たところ、高校三年生か大学一年生ぐらいな感じである。


「そうかもしれないですね」


 女性は素っ気なくそう答えた。ちょっとクールっぽいところは、綾乃に似ている気がする。


 ……それにしても、この二人組がセキュリティコンサルの人かぁ。


 男の方はちょっと高圧的だし、女性の方は取っ付きにくそうな雰囲気がある。僕が想像していたセキュリティコンサルの人とは似ても似つかなかった。本当は仕事が終わったあとに最新技術がどんなもんか色々と質問しようと思っていたけど、それは到底できそうにない。


「それよりも、このスーパーの責任者に案内していただけますか? 仕事をはじめるので」


「あっ、すみません。すぐに案内しますね」


 僕はそう言いながら、セキュリティコンサルの二人組をスーパー・サクラギの店内へと案内した。


 とりあえず、今は一刻もはやく片瀬さんに引継ぎをしたい気分である。

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