表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/131

第117話 作戦開始

 ガーディアンとしての知名度を上げて、デモニッシュをおびき出す。


 それは僕たちS.G.Gにとって、もっとも捕まえられる可能性の高い作戦だった。熱海旅行から戻ると、本格的に作戦を進めていく。


 まずS.G.Gとコネクションのある出版社や放送局と連絡を取って、積極的にインタビューを流してもらった。まずデモニッシュに対して「今のガーディアンは月之下アキラだ」と分からせないといけないからだ。


 その上で世間の人からの支持を受けるために、密着取材を受けた。『現役高校生のGメンが語る、万引きの現状と未来』という題名でドキュメンタリー番組を放映するのだ。より多くの人の注目を集めるために、僕がS.G.Gに入った背景や熱意なども脚色された。『デモニッシュ』という組織名こそ出さないものの、番組では「広域窃盗グループのことを憎んでいる。可哀想な人たちだと思う」という発言もした。黒木の反感や怒りを買うためである。


 完全にデモニッシュを捕まえるための『撒き餌』になった僕のことを、片瀬さんは心配していた。しかし僕としては、何も困ることはなかった。この程度の苦労で黒木を捕まえられるのであれば、安いものだとすら考えている。


 そして六月になる頃には、僕の知名度はかなり上がった。学校のみならず、街を歩いていても「あっ、S.G.Gの人だ!」と声をかけられるほどだ。もちろんこんな状態では万引きGメンはできないので、仕事をするときは必ず変装をするようにしている。


 そんな状況の中、僕は小畑さん、片瀬さんと一緒に今後の方針について話し合った。


「そろそろ、お膳立ては済んだな」


 スパークルの事務所で、小畑さんがノートパソコンの画面を見ながら言う。


「これはWebでの検索数のグラフだ。今のアキラくんは、人気アイドルと同じぐらい検索されている。それだけ知名度が高いってことだ」


 小畑さんが画面を見せてくれる。そこには折れ線グラフが表示されていて、二つのデータが記載されていた。どうやらこのデータがWebでの検索数を表しているらしい。それを見ると、たしかに僕は某人気アイドルと同じぐらい世間の注目を集めているようだ。実際、それは実生活でも感じている。


「テレビでもデモニッシュを煽るような発言をしているし、確実に黒木はアキラくんのことを知っているハズだ。今頃は怒り心頭だろうな」


「……でも、わたしは心配だな。そんな風に黒木勘五郎の悪口を言ったら、月之下くんが別のところで襲われるかもしれないし」


 片瀬さんの不安に対して、小畑さんは「その心配はないよ」と両手を振る。


「これまでの話を統合すると、黒木はガーディアンを倒すことで自分の存在意義を証明しようとしている。そのためには正々堂々、ガーディアンを倒さないといけないんだ。寝込みを狙って倒しても、なんの証明にもならないだろう?」


 小畑さんの説明に、片瀬さんはしぶしぶ頷いた。やはり片瀬さん的には、僕のことが心配なのだろう。


 しかし僕としては「デモニッシュに仕事とは関係ない場所で襲われる」とは思っていなかった。もしそれで黒木の恨みが晴れるなら、いちいち綾乃を小畑さんに差し向けたりしないからだ。デモニッシュは異常者集団――とS.G.G内では言われるけど、行動理念には一定の正当性がある。何も心配はいらない。デモニッシュに襲われるのだとしたら、仕事中だけに決まっている。


「計画通りに進めば、もうじきデモニッシュとの直接対決ですか?」


 僕の質問に、小畑さんは不敵な笑みを見せた。


「いま、アキラくんの注目度は最高潮に達している。この状態で、ガーディアンを誤認逮捕に追い込む……デモニッシュとしては、これ以上にないシチュエーションだと思わないか?」


 たしかに、と僕も不敵な笑みをこぼす。僕の注目度は異常なぐらいに高まっている。この状態で誤認逮捕をしたら、連日連夜あらゆる媒体で叩かれるだろう。オブシーンのとき以上に、S.G.Gが失墜する可能性も高い。デモニッシュとしては、この機会を逃す手はないだろう。


「当初の予定どおり、アキラくんには今まで以上に積極的に現場に出てもらう。いつ相対するか分からないから、くれぐれも気を抜かないでくれ」


「わかりました」


 拳を強く握りしめて、僕は頷く。僕はここ数か月、特定の地域に絞ってGメンの活動をしてきた。デモニッシュに対して「新しいガーディアンはここにいるぞ」とアピールするためである。かなり大々的に動いてきたから、きっとデモニッシュ側も僕たちの動きを察知しているだろう。いや、むしろ察知していてくれないと困る。


「……月之下くん。絶対、無理だけはしないでね」


 片瀬さんが心配そうに僕に語りかける。僕は片瀬さんを心配させまいと、満面の笑みを作って右手で「グッド」のポーズをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ