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第108話 綾乃の確保(9)

 翌日は食器の重なる音、少し甲高い音で起きた。


「おはよう。随分と寝坊助さんだねぇ」


 テーブルに食器を置きながら、片瀬さんが笑って言った。


 おはようございます、と言ってから時間を確認する。今は午前十時だった。どうやら綾乃と話し終えてから、随分と熟睡してしまったらしい。


「あれっ、綾乃はどこにいるんですか?」


 寝ぼけた目で周りを見ても綾乃がいなかったので、心配になって片瀬さんに問いかける。


「綾乃ちゃんはシャワーに入ってるよ。あっ、だから洗面所に行くのはもう少し待ってね?」


「……それ、いま聞いておいてよかったです」


 片瀬さんから聞いておかなかったら、洗面所で綾乃とバッティングしていたかもしれない。


 その後は片瀬さんの作ってくれたスクランブルエッグとトーストを食べながら、今日の予定を話す。


「……わたし、自首しようと思ってます。アキラくんたちに捕まってるから、自首って言えるのかは分かりませんけど」


 突然、綾乃がそんなことを言った。予想していない発言で、思わず手に持ったコップを落としそうになる。


 いや、でも……そうか。小畑さんも言っていたけど、綾乃がやったことは紛れもなく犯罪だ。だから遅かれ早かれ、警察には行かないといけない。ただ僕としては、もう数日はのんびりと休息を取ってもいいと思う。


 僕の考えを告げると、綾乃は力強く首を横に振った。


「自分勝手な考えで申し訳ないんだけど……早く警察に捕まった方が、気分が晴れるかなって、そう思っているの。こうしてずっと隠れるみたいに過ごしていても、ドンドンと辛くなるだけだから……」


 綾乃に言われて、僕も片瀬さんも返す言葉を失う。この気持ちばかりは、綾乃にしかわからないな、と思った。


 強く止めるのも逆効果になると思い、最終的に綾乃を警察に連れていくことになった。大きく動くことになったので、一応小畑さんに電話で確認を取る。


「なるほどな。まっ、本人がいいならいいんじゃないか?」


 小畑さんは電話越しで、あっけらかんとそう言った。


「一応以前から、こっちの方で弁護士を見つけてある。俺に法律のことを教えてくれたのもこの人だ。日曜日は休業日だけど、特別料金を支払えば対応してくれるハズだ。俺の方で声をかけておくよ。警察に行くのはちょっと待ってくれ」


「ってことは、弁護士と一緒に警察署に行く……ってことですか?」


 あんまり法律関係のことは詳しくないので、思わず問いかけてしまう。僕の質問に、小畑さんは小さく笑った。


「そっか、こう見えてアキラくんはまだ高校生だったな」


 そう言ってから、小畑さんは弁護士のことについて教えてくれた。


 どうやら弁護士と同伴で自首をすることで、綾乃にとって良いように話を持っていきやすくなるらしい。ひとりでも自首は可能だけど、綾乃の性格や状況を考えると、絶対に弁護士と同伴の方がいい、というのが小畑さんの意見だった。


「弁護士って言うと仰々しく聞こえるけど、とどのつまり駒崎の味方だ。駒崎にもそう伝えておいてくれ」


 わかりました、と返事をしてから電話を切る。弁護士の件について教えると、綾乃は快く頷いてくれた。


 こうして綾乃は、弁護士と一緒に警察署に行って自首をした。色々あって綾乃が僕たちのもとに戻ってきたのは、一月の中旬のことだった。

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