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お迎え

 それからの日々は過ぎ……。


 今日から、二人と一緒に住む日がやってくる。


 兄貴と桜さんは、今頃飛行機の中だろうな。


 三時の待ち合わせ時間を目安に、二人を迎えに駅へと歩いていく。


「さて、そろそろ……おっと、来たか」


「お、お兄ちゃん!」


「おじたん!」


「よう、二人共。元気にしてたか?」


 少し目の下が赤いことはあえて触れない。

 寂しいに決まってるよな。


「う、うん……あっ——お世話になります!」


「お、おしぇわ……なります!」


「クク、こちらこそよろしくな」


 二人を連れて商店街を歩いていく。


「わぁ〜人がいっぱいいる」


「お姉ちゃん! 人いっぱいだお!」


 二人がこういうのも無理はない。

 田舎暮らしがしたかった兄貴達は、埼玉でも田舎の方に住んでいた。

 それこそ、電車のドアが手動だったり、駅員がいなかったり……。

 ここも埼玉だが、あちらとは雲泥の差だろうな。

距離的には大したことないのに……なんでこんなに差が出るかね?


「買い物したかったら、ここの八百屋が良い。綺麗なお姉さんがサービスしてくれるからな」


「やだよ! もう! 芹沢さん、その二人が例の娘さんかい?」


「ええ、よしえさん。春香、詩織、俺の行きつけの八百屋さんの奥さんだ」


「よ、よろしくお願いします!」


「あいっ!」


「あら、可愛い子達ね。ええ、いつでも来てちょうだい。貴方達のお兄さんには、私達もお世話になってるから」


「いえ、こちらこそお世話になってます。いつも新鮮な野菜を頂いていますから」


 俺の経営している飲食店の野菜は、ここでいつも購入している。

 売り上げに貢献する代わりに、宣伝もしてもらえるしな。



 その後も店を紹介しつつ、俺の家へと向かう。

 理由はいくつかあるが、一番大きな理由は……俺が通報されないようにだ。

 もしくは通報されても庇ってもらえるようにだ。

 女子高生と幼女を連れたアラサーおっさんとか……捕まる案件だ。

 俺のそんな苦労も知らず、二人は楽しそうだ。


「ふふ〜ふ〜ん、お店がいっぱい!」


「これなら、色々買い物できるね」


 まあ、良いか……これから寂しい気持ちになることは避けられない。

 今のうちに楽しんでもらうとするか。




「はい、ストップ。ここが俺の家であり、俺の城でもある」


「わぁ……! ここがお兄ちゃんのお店……!」


「ここがおじたんの家なの? 階段が上にあるお?」


「一階が店舗で、二階が住処になっている。さあ、まずは荷物を運ぶ。ほら、二人とも」


「ふえっ? じ、自分でできるよ! トランク二個なんて無理だよっ!」


「はっ、飲食店の男を舐めるなよ? こちとら、重たい寸胴を持ち上げることもあるんだぜ?」


「で、でも……」


「大丈夫だって。お前が怪我でもしたら困る」


 俺が兄貴に殺される。


「お、お兄ちゃん……うん、お願いします」


「おねたいします!」


「はいよ」


 俺は二人からトランクを預かり、階段を上っていく。


「おじたん凄いお!」


「はは、そうだろ。よっこらしょと……」


 階段脇にトランクを置く。


「お兄ちゃん、力持ち……が素敵」


「ん? 春香、何か言ったか?」


「う、ううん! なんでもないのっ!」


「おねえたん? へんにゃの」


「ほら、とりあえず中に入りな」


 ドアを開けて、階段を上ってきた二人を先に入れる。


「お、お邪魔しまーす……」


「おじゃまーす!」


「ププッ!?」


 い、いかん! 『おじゃまーす』がつぼった!


「おじたん?」


「お兄ちゃん?」


「い、いや、気にするな。ほら、そこが洗面室になってるから。まずは手洗いうがいをしなさい」


「「はーい!!」」


 可愛いらしい声が重なり、二人して洗面所に入る、


「さてと……この荷物をあの部屋に運んでと」




 荷物を移動した後、俺も手洗いうがいをし。

 ひとまず、リビングで落ち着くことにする。


「ここがお兄ちゃんの家かぁ……思ったより綺麗だね」


「どういう意味だ? 俺は元々綺麗好きだぞ?」


「あっ、そういう意味じゃなくて、中古だって聞いてたから」


「ああ、そういう意味か。まあ、それなり高かったしな」


 俺の家は元々、雑貨屋さんだったところをリフォームした建物だ。

 一階でお店を、二階を住居として使っていたと。

 俺はそれを買い取って、一階をお店用にリフォームしたということだ。


「うにゃ……」


 こたつが暖かったのか、詩織が寝てしまう。


「あらら、寝ちまったよ」


「昨日、あんまり寝てないみたい。お父さんとお母さんに泣きついてて……」


「そうか、無理もないな。まだ五歳には理解できないだろう」


「うん……とりあえず納得はしてくれたと思うんだけど」


「わかってるよ、すぐにまた泣いてしまうことは。何か手を打っておくから心配するな」


「お兄ちゃん……えへへ、ありがとう」


「お前は平気か? 寂しくないか?」


「わたしはお姉ちゃんだもん。それに、もう高校生になったんだよ? 」


「そうか……早いもんだな。俺の周りをチョロチョロしてたお子様が」


「も、もう! わ、私だって……もうすぐ結婚できる歳なんだから」


「はっ、小娘が何を言ってる。十年早いぜ」


「むぅ……子供扱いして」


 本人は嫌がるかもしれないが……。


 その膨れた顔を見て、尚更のこと可愛いと思ってしまった。


 もちろん、義妹としての話だ。

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