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アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~  作者: おとら@9シリーズ商業化
義妹との生活

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もう子供ではない

 ……大丈夫か?


 あいつ、不器用っぽいし……。


 俺が見ててやった方が良いのか?


 いや、しかし、甘やかしすぎるのも良くないし……。


 まあ、加奈子さんもいるし平気だと思うけど……。



「兄貴!」


「ん? どうした?」


「いや、それはこっちのセリフですよ。さっきから手が動いてないですよ?」


「げっ……ほんとだ。すまん、すぐにやるわ」


 いかんいかん、俺の方が緊張しているじゃないか。


 再び切り替えて、手を動かして開店へ向けて準備を進める。






 そして、開店時間となる。


 春香と今野さんは、店の入り口立ってお客様を出迎える。


 俺は手を動かしつつも、耳だけを傾ける。


「い、いらっしゃいませー!」


「あれ? 新人さん?」


「は、はい!」


「あらー、随分若い子なのねー?」


 どうやら、年配のご夫婦の方のようだ。


「今日から入った新人さんなんです。春香ちゃんっていうので、よろしくです」


「おおっ、今野さんが先輩か」


「初めての女の子の後輩よね?」


「へへー、私も先輩ってやつですね」


「じゃあ……春香ちゃん?」


「は、はい!」


「良い店をバイトに選んだわね。頑張ってね」


「それでは失礼」


「あ、ありがとうございます!」


 ……ガチガチだな。

 まあ、こればっかりは慣れていくしかないか。

 とりあえず、態度が悪いわけじゃないしな。





 その後は、己の仕事に集中する。


 幸い、悲鳴や怒号が聞こえることなく、時間は過ぎていく。


 まあ、よく考えてみたら、今日は流れを見るだけだしな。


「ふぅ……ひとまず乗り切ったか」


 地獄のピークを終え、一度キッチンから外を覗く。


「さて……」


「あ、ありがとうございました!」


「頑張ってね」


「うんうん、良い子が入ったね」


 店入り口で見送りをして……。


「いらっしゃいませ!」


 お出迎えをして……。


 あっ——泣きそう。


「いや、このくらいできて当たり前なんだけどな……」


 どうも、俺の中では小さいままで止まってるからなぁ。

 当たり前だけど、もう高校生なんだよなぁ。






 そして二時になり、ノーゲス状態に入る。


「春香、お疲れさん。とりあえず、二時までにしよう」


「き、緊張したよぉ〜!」


「お、おい!? しがみつくなよ、俺は油臭いぞ?」


「うぅー……いいもん」


 結局、俺の服の端を掴んだまま離さないようだ。


「ふふ、仲が良いわね〜」


「ほんとですよー。私の妹も、これくらい可愛げがあればなー」


「お二人共、フォローありがとうございました」


「いえいえー。ただ見てるだけですからね」


「本当にお給料上乗せで良いのかしら……?」


「ええ、そこは遠慮なくもらってください。指導する側だって大変ですから」


「ところで、妹さんはどうしたんですかー?」


「あっ——忘れてた!」


「お、お兄ちゃん!」


 俺が急いでカーテンを開けると……。


「どうですか?」


「あいっ! こっちが開いたお!」


「では、そこから繋げてみましょうか」


「あいっ!」


 ……なんという、和やかな光景だろうか。

 紳士的な老人と、幼女が砂遊びをしている……。

 どうやら、砂場を利用してお城を作っているようだ。


「あらまあ……亮司さんが笑ってる」


「あれー、ほんとですね。あんな顔、見たことないですよ」


「お兄ちゃん、詩織も楽しそう」


「だな、よく懐いているな」


 やはり、俺の考えは間違ってなかったか。

 亮司さんに必要なのは、人との触れ合いだ。

 そして詩織にとっても、貴重な時間になるだろう。


「とりあえず、声をかけますかね……亮司さん!」


「おや? 宗馬君?」


「おじたん!」


「亮司さん、もう二時ですよ?」


「な、なんと……申し訳ない! 詩織ちゃん、お腹が空いてますよね?」


「あいっ! でも楽しいお!」


「そうか、お腹が空いても楽しかったのか。じゃあ、軽く食べような」


 お昼寝もさせないといけないし……。

 多分、今はテンションが上がっているから眠くないだけだろうし。





 手洗いうがいをしている間に、ささっとパスタを茹でる。


「色とりどりの野菜で作るか」


 ベーコンとニンニク、さらに唐辛子をオリーブオイルで炒める。


「色づいたら……」


 角切りにしたズッキーニ、ナス、エリンギ、ほうれん草を加える。


「軽く火を通したら……トマトを入れてと」


 湯むきしてあるトマトを刻んで入れる。


「ここに特性醤油をほんのり香り付け程度に入れて……うん、美味い」


 ベーコンの脂と、野菜とキノコの旨味がしっかり出ている。

 そしてトマトの酸味と、ニンニクもいい味を出している。


「ところで……さっきから何をしている?」


 振り返ると、キッチンの脇から春香が覗いていた。


「ふえっ!?」


「何か用か? ああ、腹が減ったのか。もう少し待ってな」


「そ、そうじゃなくて……入っても良い……?」


「うん? ああ、いいぞ」


 トコトコと俺の側にやってくる。

 動いたからか、ほんのりと汗をかいている

ん? 何か良い匂いがする気が……。

 ……待て、今気づいた。

 《《どうして、妹の匂いを良い匂いと感じている?》》

 ……これでは、まるで……。


「わぁ……良い匂い……お兄ちゃん?」


「あ、ああ! ふふふ、そうだろう? メニューにない、俺の特製パスタだ。これは冷製パスタでもいけるしな。結構美味いんだよ」


 いや、気のせいだろう。

 少し女日照りが続いているだけだ……やっぱり、彼女でも作るかね。


「へぇ〜! あっ——腕が……」


 春香の視線を追うと、俺のコック服の袖が下がって来ていた。

 これでは、料理に支障をきたす。


「悪い、袖を折り畳んでくれるか?」


「は、はぃ……」


「何故照れる?」


「お、お兄ちゃんのばかぁぁ……ずるいよぉ〜」


「何が?」


「う、腕の血管が……はぅ」


「血管?」


「おじたん!」


「おっ、きたな」


 砂だらけだった詩織がカウンター席にやってくる。


「お腹へったお!」


「はいはい、すぐにできるから待ってな。春香、お前も席に着きなさい」


「う、うん」


 ちょうど良いタイミングでタイマーが鳴る。


 パスタの茹で汁と、用意していたソースを絡ませて……。


「完成だ」


 色とりどり野菜の、トマトペペロンチーノと言ったところか。


 皿に盛って、二人に提供する。


「はいよ、召し上がれ」


「いただきます」


「いたーきます!」


「お、美味しい!」


「おいちい!」


「ふむ……」


「亮司さんもどうぞ?」


「良いのですか?」


「ええ、もちろんです。詩織のお世話をしてもらいましたから」


「では……トマトの酸味とほうれん草の苦味がアクセントになってますね。そして、ナスとズッキーニの食感が楽しめますね……うん、美味しいですよ」


「うしっ!」


 この方から、美味しいと言われるのは嬉しい。

 パスタ作りも一流の方だからな。


「あと……これからも、たまに面倒を見てもよろしいでしょうか?」


「ええ、もちろんです。こちらからお願いしたいくらいです。色々と教えてあげてください」


「ありがとうございます……まさか、こんなに楽しいとは。短い間ですが、余生を楽しめそうですね」


 そう言い、微笑んでいる。


 ウンウン、これで亮司さんも生き生きするし、詩織も寂しくないだろう。


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