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作者: 水無 水輝

夏になると煩く鳴く生き物がいる。奴らの声は耳を劈き、私の邪魔をしてくるのだ。今年もそんな季節がやってきた。

奴らが煩く鳴いているのを聞くと、夏の訪れを嫌という程感じるものだが、今年の私は少しの疑問を抱いたのだ。一体奴らは何匹いるのだろうかと。その煩さからして、もはや庭の木を覆うほどにいるのではないかと思った。

私はついに気になって、席をたち、庭へと出た。煩い騒音はやはり木から鳴っていたが、一見しただけでは奴らを見つけることなど出来なかった。燦々と照りつける太陽と茹だるような暑さに晒されながら、私はひたすらに木を凝視した。

然し、いくら目を凝らせど、奴らは見つからなかった。木の根元からそれぞれの葉の先までしっかりと見たであろう、何度も何度も。延々と煩く鳴り響く奴らの声を聞きながら。


其れから、幾許かの時間が経った後、突然、別の大きな音が鳴り、私の集中を遮った。それは犬が吠える声で、その声のおかげで私は我に返ることができた。気づけば全身に汗をかき、喉は砂漠のように干からびていた。吠え続ける犬を尻目にし、私はすぐさま空調の効いている居間に駆け込んだ。冷蔵庫から冷えた麦茶を口の中へ入れ、喉の乾きを潤した。

荒れた息を整えながら少し考える。もし今も吠えているあの犬が居なければ私はどうなっていただろう。

ちらりと時計を見れば1時間程、時間が経過していた。


奴らはそれぞれの鳴き声を持つ名前で呼ばれている。それらはいつも個ではない。鳴き声を聞き分けることができない。だから私は奴らをいつも奴らと呼んでいた。然し、一夜明けて私は妙な静けさを感じ、庭を見ると、そこには1匹の蝉の死骸があるばかりであった。今年の夏はもう終わったのだろう。

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