お客様の中にレジマスタ一はいませんか?
10人は並んでいる。
この町の住人は、みんなここに買いに来るから。
ここがこの町唯一の、スーパーマーケットだから。
でも、レジ打ちは私しかいない。
経費削減みたいな感じだ。
今日は、特にお客で溢れている。
もう、最終手段を使うしかない。
「お客様の中に、レジ打ちしてくれる人はいませんか?」
「この中に、レジマスタ一はいませんか?」
「お客様の中に、レジマスタ一はいませんか?」
列の一番後ろにいた淑女が、ゆっくりと右手をあげた。
「私、そうですけど」
「レジ、お願いできますか?」
「はい」
淑女にレジを頼んだものの、すぐに列は増えてしまう。
「二人では、さばききれない量ですよね?」
私は、不安を口に漏らした。
しかし、淑女は違った。
「頑張ろう」
無駄な動きは、ひとつもなかった。
素早くレジ打ちをし、どんどん列は減っていき、とうとういなくなった。
「はやいですね。ありがとうございました」
「いえ。私、色んなスーパーで、よく頼まれるので」