9005K列車 おかしい奴
あさひサイド
6月1日。
輝「ただいま。」
テル君が仕事から帰ってきた。本当に夜勤明けで行くつもりらしい。
あさひ「今更だけど、本当に平気。目の下にクマ出来てるわよ。」
テル君から鞄を受け取り、そう聞くが、
輝「まぁ、早く行こうよ。僕飛行機乗るの初めてだから。」
・・・。これは何を言っても行くって言って聞かないか。
守山駅まではタクシーで行き、そこからは新快速や地下鉄を乗継いで大阪空港まで向かう。大きい荷物を提げて空港に向かうって事、私修学旅行以外でしたことがないような・・・。
あさひ「こんな風にどこかに行くのは修学旅行以来かも。」
輝「こんな風にって・・・。春休みにも日本中旅行したじゃない。」
あさひ「それはそうだけど・・・。でも、アレはテル君の我が儘に付き合ったというか・・・。人間的な旅行をしてなかった気がするんだけど・・・。」
輝「ぁあ・・・ハハハ・・・。やっぱり人間的じゃなかったかぁ・・・。」
あさひ「少なくとも女の子を連れてくような旅行では無かったと思うわ。楽しかったけど・・・。」
輝「・・・。」
あっ、やっぱり連れてくんじゃ無かったって思われたかな・・・。
輝「まぁ・・・。僕も結構色んな所に連れ回しちゃったからね。反省はしてる。」
あさひ「後悔は。」
輝「してない。だってなんだかんだ楽しかったんでしょ。」
あさひ「・・・ていうか大阪空港ってこんなに遠いのね・・・。」
輝「滋賀県にも空港があればね。」
あさひ「・・・滋賀県に空港有っても誰が使うかなぁ・・・。」
ちょっと思考を巡らせてみる。滋賀県から関東・九州博多・北陸は圧倒的に新幹線が速い。空港で待つ時間があったら、新幹線に乗ってしまったほうが早く目的地に着くところの方が多いだろう。かといって仙台・青森・四国に行く航空便を飛ばしたところで滋賀県民が乗るのかと言われると・・・乗らないのが目に見えている。それに・・・
輝「そもそも作る場所も限られちゃうか・・・。」
あさひ「それもそうね・・・。」
やっぱり滋賀県に空港はいらないって言うのが結論になってしまうか・・・。
輝「と・・・チェックインしないとね。航空機ってこれがあるから面倒くさいんだよねぇ・・・。」
あさひ「まぁ、これが済んだら早いから。」
輝「・・・うん・・・。
アレなんか反応が悪い。
あさひ「ねぇ・・・。やっぱり新幹線の方が良かった。」
輝「個人的には飛行機って嫌いなんだよね。落ちるかどうか心配で・・・。」
あさひ「メーデーとかの見過ぎ。飛行機が落ちる可能性は400年の1回とかそういう低いレベルだから。あくまで航空事故が多いのは運用されている飛行機の数が多いだけだから。」
テル君って高所恐怖症なんだろうか・・・。ていうか、これから乗せる人間に私は何を言っているんだろうか・・・。
輝「ああ・・・。まぁ、とりあえずチェックインしとかないとなぁ・・・。」
あさひ(あっ・・・、目からハイライトが消えた。)
自分たちで航空機に乗るなんて事は無かった。テル君と一緒にチェックインが出来る機械の前に行って、「ああでしょ、こうでしょ」といいながら、チェックインを進める。その内、チェックインが終わったらしく紙が機械から出てきた。
ANA777 伊丹→新千歳
どうやらこれが航空券のようだ。
チェックインが終わったら、次は荷物を預ける。衣服が入っているキャリーバッグを預けると小さいポシェットだけになってかなり身軽になる。身軽になったら制限エリアに進んで、飛行機の搭乗開始まで待つことになる。その間にテル君のことなんとかしないとなぁ・・・。
輝「早いところ搭乗時間にならないかな。」
あさひ「・・・。」
高所恐怖症も自分の好きなところに行くって言うことには勝てるらしい。相変わらずおかしい奴・・・。
アナウンス「ただいまより札幌行きANA777便の優先搭乗を開始いたします。」
それが入ると同じ便に乗る人たちが列を作った。私達は優先搭乗ではないので、優先搭乗が終わってからゆっくりと搭乗した。大阪から北海道に行く人って言うのは結構多いらしい。客席は結構埋まっていた。
乗客が全員席に座り、準備が出来たらしい。飛行機がついに動き出した。滑走路までやって来ると「ギュイィィン。」とエンジンが唸る。体が座席に押しつけられる感覚。その内、ふわりと浮き上がったかと思うと自身を下に引っ張る力に逆らってグイグイ上がっていった。
新千歳までおよそ105分だ。
ANA777便 大阪伊丹1550→新千歳1735
輝「・・・あぁ・・・死ぬかも・・・。」
あさひ「寝てけば・・・。」