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9002K列車 日本離れ

輝サイド

 スマホ片手に僕は調べ物をしていた。

 高校卒業と同時にあさひと旅行に行ったから、お金が殆ど残ってない。しかし、思わぬ形でお金が舞い込んできた。まさかお給料全部自由に使ってくれていいって言われるとは思ってなかったからなぁ・・・。

七海「おっ。まだ起きてたの。」

輝「七海さん。」

七海「何だ。何だ。どこかあさひを連れてってくれたりするの。」

輝「はい。そのつもりです。」

七海「何処に行こうって考えてるの。」

輝「北海道のつもりです。タウシュベツ川橋梁って言う橋を見に行こうかなと・・・。」

七海「へぇ。それってどんなところ。」

僕が写真を見せると七海さんから予想だにしない反応が返ってきた。

輝「・・・ていうかなんで知ってるんですか。」

七海「フフフ。全部受け売りよ。」

輝「・・・あの・・・もしかしてですけど付いてきたいですか。」

七海「私はいいわよ。貴方たちが行きたいところに私が付いていくのは野暮ってものでしょ。それに一番行きたかったのはあの人だろうから・・・。」

輝「・・・。」

そう言いながら、七海さんは僕の後ろに置かれている写真を見た・・・。ああ、確かに。あの人なら一番行きたかったというのは頷けるだろうな・・・。


あさひサイド

 お母さんに散々恥ずかしいことを言われた翌日・・・。

あさひ「テルくーん。」

輝「・・・今日、お休みなんだからいいじゃーん・・・。」

あさひ「私がお休みじゃないの。早く起きてご飯食べて。」

 布団をゆらして、起こそうとする。同棲し始めてからこういう事してきたけど、新婚生活ってこんな感じなんだろうか。じゃあ・・・。

輝「おはようのキスでもしてくれたら、起きるよ。」

あさひ「おはようのキスでもしたら起きるのかしら。」

輝・あさひ「・・・ッ。」

思いもよらぬ事を口走った気がする。ああ、恥ずかしい。

七海「おうおう。見せつけてくれるわね。」

輝「七海さんっ。」

あさひ「お母さんッ。」

七海「やっぱり新婚生活まっしぐらの二人の間に私って入る隙間なさそうねぇ・・・。仕事行ってくるから後のことはよろしく。」

と言って、早々に出て行ってしまった。

輝・あさひ「・・・。」

輝「起きるよ。」

あさひ「うん、ご飯準備しとくね。」

 ご飯を準備して、テル君が起きてくるのを待つ。さっきまで起きるの渋ってたのとは裏腹、ご飯の席に着くのは結構早い。前に「食事は作業」って言ってたこともあったっけ。そんなことを思い出した。

輝「いただきます。」

あさひ「はい、召し上がれ。」

そう言ってから、完食までは早い。もうちょっとしっかりかんで食べたら。なんて18歳にもなる人に言うことじゃないだろう・・・とか想いながら。

あさひ「何か調べ物でもしてたの。」

と聞いてみた。

輝「うん。ねぇ、あさひ。お互いさ、正社員としては初めてのお給料貰った訳じゃん。」

あさひ「そうね。」

輝「今月は家計に入れるとか考えずに自由に使っていいって言われたからさ、どっか行かない。」

と言われた。

あさひ「ちょっと前に電車で旅行したでしょ。それじゃ足りないわけ。」

 この顔はもう「行くことを決意した顔」だ。一緒にいるようになってからそれがよく分かるようになった気がする。

あさひ「はいはい。それで、何処に行きたいのかなぁ。鉄道オタクさん。」

輝「北海道。」

あさひ「はい・・・。」

輝「だから、北海道。」

あさひ「2回言わなくていいからね。・・・北海道の何処に行くつもり。」

輝「タウシュベツ川橋梁って言う橋でも見に行こうかなと思って。帯広の北60キロくらいの所にあるんだよ。」

と教えてくれた。それよりも聞いたこともない橋だ。タウシュベツっていう日本離れした名前がいかにも北海道らしい。

あさひ「それでその橋を見に行きたいと。」

輝「うん。今まで行ったこと無いからね。高校卒業した時に免許も取ったし、そこまで行けるからさ。」

あさひ「成る程。バスもないのね。」

輝「うん。だから、帯広からは車で行かないと行けないんだよね。」

 その言葉に私は嫌な予感がした。

あさひ「ちょっと待って。北海道まで何で行くつもりでいるの。」

輝「えっ、新幹線だけど。」

やっぱり・・・。大阪からなら航空機じゃないんだろうか。そんな常識はこの人には通じない。だが、いつでもそれにつきあえるわけじゃない。

あさひ「あのさ、春休みはテル君の我が儘につきあったんだから、今度は私の我が儘も聞いて貰います。北海道までは往復航空機で行って。」

輝「エー・・・。」

あさひ「でないと行かないからね、私。それに・・・ちょっとくらいの電車ならつきあうから。」

輝「分かった。分かった・・・。じゃあさ、航空会社何処使いたい。」

あさひ「えっ・・・。ピーチとかでいいんじゃないの。」

そう言うとテル君の顔は曇った。あっ、これは使いたくないんだろう。

輝「こだわりがないなら、ANAでいいかな。」

と言った。まぁ、私としてはピーチでもJALでも何処でもいいんだけど・・・。

 テル君からその橋を見に行く行程が送られてきたのはそれから30分も立たない内であった。朝ご飯の片付けやお掃除はテル君に任せた筈なんだけどなぁ・・・。


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