9010K列車 語彙力皆無
あさひサイド
さっき車を止めたタウシュベツ展望台の場所を通り過ぎ、右に曲がって細い道に入った。
あさひ「えっ、こんな所入っていくの。」
輝「そりゃ、タウシュベツ川橋梁は林道の先にあるからね。仕方ないよ。」
果たして仕方ないで済まされるのだろうか。行く手には明らかに私達を拒絶しているゲートが見えるのだが・・・。
するとゲートの手前に止まるとNPO職員の一人がさっさと降りて、ゲートを開けた。
あさひ「えっ・・・。アレって良いの。」
輝「ここのイベントは上士幌町から鍵を借り受けて、通行できるようになってるから問題ないんだよ。まぁ、その為の制約って言うのは色々あるだろうけどね。」
バスが通れる幅にゲートが開けられるとゲートを通り抜ける。通り抜けてすぐにまた止まり、ゲートを閉めた。さっき降りた職員さんが戻ってくると、またバスは動き出す。奥へ奥へ。大自然の真ん中を進んでいく。
NPO職員「皆様。お待たせいたしました。まもなく駐車場に到着します。駐車場からタウシュベツ川橋梁までは歩いて接近することになります。皆様、ご準備をお願いします。」
と案内がある。これからダム湖に近づいていくんだから、歩いて行くしかないのは当り前か。
少し開けた場所にバスが止まる。どうやらここが駐車場として解放されているところらしい。
全員がバスから降りて、NPO職員の案内に従って歩いて行く。一定の幅で気のない場所が続いている。テル君の顔をチラッと見てみたが、ここも電車が通っていた場所の跡のようだ。言葉はなかったけど、目を見れば明らかだった。
そして、その木も無くなり一気に視界が開けた。この辺りが糠平湖の境なんだろう。今は、ここに水はない。そして、視線の先には白い橋がある。
NPO職員「こちらが国鉄士幌線のタウシュベツ川橋梁です。」
と説明が入った。
説明によるとこの橋は昭和14年の時に架けられたそうだ。以来、糠平ダム建設が決定し、新線付け替えされる昭和30年まで使用されたらしい。鉄道橋としてはたった16年。湖底に沈んでいる時間の方がいつの間にか長くなっているらしい。
ただ見るからに劣化が進んでいる。いつ崩れてもおかしくないって言うのはその通りだろう。さっきは次に来る時は2日に分けてとか言ってたけど、次に来る時はこの橋自体無くなっているかもしれない・・・。
輝「・・・。」
あさひ「テル君。」
輝「・・・。」
あさひ「ねぇ、テル君ってば。」
輝「人間、感動するとここまで語彙力失うものなんだなぁ・・・。」
あさひ「・・・見れて良かった。」
輝「こりゃ、1回じゃ足りないな。」
あさひ「ハハハ・・・。1回で満足してくださいね。テル君。」
テル君的にはやっぱり来て正解だったらしい。
この後、ツアーはもう少し北に有る幌加駅跡や展望台の路盤跡を通る第五音更川橋梁という橋の見学をしたりして、15時30分くらいに解散となった。
ひがし大雪自然ガイドセンターからはレンタカーで帯広の市内まで移動。レンタカーの帯広支店にレンタカーを返し、千歳まで特急列車に乗って帰る。
帯広1748→特急「おおぞら10号」→南千歳1954
あさひ「ねぇ、テル君。明日、ちょっとだけ時間貰って良い。」
と提案するのだった。
南千歳1958→快速「エアポート199号」→千歳2002
タウシュベツ川橋梁って、2022年も繋がったまま湖上に現れてくれるだろうか・・・。それさえ望めないほど劣化しているから創作の中でしか繋がったままでいられないんだろうなぁ・・・。