ユーの名は、第六天……
眠い。
半寝で書いていたから変な感じになってると思います。
「いや、なにすればいいんだよ?Playってことはゲームか?これ」
疑問を靄に聞くが答えない。
身動き一つ…いや、揺らぎ一つ起こしていないので聞いているのかすら怪しい。
どうしようか迷いつつ、ゲームならやってみたいと思う。
この時の好奇心を生涯恨むことになる。もう死んでいるが。
スマホと同じように画面をタッチして動かないか試す。
文字の所をタッチすると画面が変わりだし、動き始めたのだと理解する。
『ハロー!ビギナー。ようこそ、《Dungeon Play》へ。このゲームは願いを叶えたいゲスト(攻略者)と死にたくないプレイヤー(経営者)、つまりユーが出来る遊戯だ。この遊戯に負ける、要はダンジョンを攻略されるとプレイヤーは魂まで消滅しあの世この世からきれいさっぱり無くなっちまう崖っぷちのゲームだ。ユーはそんなゲームにプレイヤー側として参加してしまった哀れなビギナーさ』
「へ?」
『おや、理解できないかい?まぁいい、理解できなきゃ消えるだけだ。オレにはユーのガイドをする仕事があるが手取り足取り教える義理はない。だから、手短にいくな?』
何を言われているのか理解できなかった。
そりゃ、最期を迎えたはずがこんなところにいるのだから、ここが死後の世界か何かだろうとは思っていた。
でも、何だこれ?
願いを叶えるために襲ってくる?
攻略されると消滅する?
これ、終わりがあるのか?
もしかして、消えるその時までやり続けろってことなんじゃ。
考えに耽っている間に、声は板から出続けていた。
『ユーの設定なんかはあらかたやっといたぜ。後で確認や編集も出来るから、ヘルプを頼りにそこら辺はやってくれ。それじゃ難易度設定をやるか』
「おい、難易度設定ってなんだ!簡単とか難しいとかあるのか!?」
『おう、あるぜ。プレイヤーの格が低ければ低いほど低難易度に。逆に格が高ければ高いほど高難易度に。今からこれを設定すんだよ。それじゃ、測らせて貰うぜ格を』
これはどっちを祈ればいいのだろう。
格によって難易度が決まるのであれば、低難易度でも高難易度でも俺がやっている限り変わらないってことだろう。でも、高難易度だと他の事を複数考えないと詰むとかありそうだから、出来るだけ低難易度になってほしいと願おう。
『ほうほう、まあまあ普通の格だな。ん?なんだ、神格保有者が居るじゃねぇか。インフェルノで決定だな』
「へ?」
『そこに居るだろ?そこ』
板に付いているスピーカーの音を調整して見てほしい方角を声で示す。
そこだと言われる場所には靄があった。
これをやれ、と言ってから揺らぎひとつしない靄。
この靄が神さま?
『神格が側に居るんじゃ仕方ない、難易度はインフェルノ固定だ。インフェルノモードに設定されたから本来出きる魔物召喚機能、魔物合成機能、魔物進化機能は封印だ。その代わり、眷属化機能が使用可能となった』
「つまり、なんだ。俺はその魔物関連無しでやらなきゃならないのか?」
『そういうことだ』
「誰が、そのゲストと戦うんだよ!俺、喧嘩とかしたこと無いんだぞ!」
どうしようもない悲しみで板を振り回す。
あの靄は何一つ反応しなかったのだ。
そんなのに難易度が高くなるからどっか行ってくれと言っても意味がないだろう。
靄に話しかける痛い人にしかならない。
『け、契約すればいいじゃないか。条件は相手によって変わるが、上手くやれば普通の魔物より強いのを手に入れられるぞ』
「ただの学生に交渉事が出来るか!?ふざけんな!それに強い奴は大抵が強さを示せとかそんな系統だろうか!無茶言うな!難易度下げろ!」
『いいや、無理だね!難易度は下げない!もしもの時はその神格保有者に助けて貰えよ!オレはさっさと仕事を終えたいんだ!続きするぞ!』
「待て!下げろ!」
『下げない!それじゃ、あとはビギナーガチャをしたら終わりだ!おら!さっさとやれ!』
ガチャということは、何かしらを捻るや回すをしなければやれそうにない。なら、ガチャに関係しそうな動きをしなければ永遠と遅延できる!
『この間抜けが!端末に触ってるだけで出来るんだよ!これで終わりだ!帰れるぜ!』
板……端末から何かの台からカプセルが飛び出している映像が見えた。
カプセルは勝手に開き、中身をさらけ出す。
そこには【強制契約券】と書かれていた。
「なにこれ」
『超激レアアイテム』
「効果は?」
『条件関係無しに契約結べる』
「もしかして完全勝利?」
『はは。ユー、幸運すぎじゃないかな?』
しばらくの間、お互いに乾いた笑い声を重ねあった。
『じゃ、さっさと契約してちょ』
声はそう言うと、端末にリストを出した。
リストにはスライムやゴブリン、悪魔や天使なんかも書かれていた。
「こんな量から一つだけ選ぶのかよ。辛いんだが?」
『なら、適当にこのスライムで……』
「わかった、真剣にやろう」
そう宣言してから真剣に考えたが何しろ数が多すぎる。訳がわからなくなってきた。
「これ、ダンジョンなんだろ?魔王とか居ないの?第六天魔王の織田信長とかさ」
余りにも数が多すぎて嫌気が指し、適当に名指ししてみた。
まぁ、いるわけ無いから言ったんだが。
『居るぞ。それじゃ、それと契約な』
「は?」
『天魔族・第六天魔王織田信長とプレイヤーを契約開始。強制契約券で条件無視。契約成立。これより、第六天魔王はプレイヤーの僕として生きることになる。それじゃ、そこに召喚するぞ』
「いや、まてまてまて!」
制止の言葉を投げるが止まらず、床に何かの模様が浮かび上がる。
模様の中心から人の頭部らしき物が見え始めると赤黒い煙も出始めた。
少しずつ模様から出てきたそれは、とても同じ人とは思えなかった。
頬は痩せこけ、身体中の骨が浮き出ており目は血走っていた。
服装は大層なもの着物で、一着で数千万はすると言われても納得できるものだった。
だが、時折その着物の裾を引っ張る手が見える。
それらの手は全て骨であり、赤く黒い。
まるで血が染みているかのようだ。
いくつもの手が引っ張り、地に沈めようとしているように見える。
引っ張るのを強くすると、着物を着ている者が見て骨の手はまるで無かったのかのように赤黒い煙に霧散する。
この人物を見て理解した。
この人は怨念を毛程も気にしていないのだ。
当たり前のように人を殺し。当たり前のように人を救う。
自分のやりたいことをやり続け、天下を獲るはずだった人。
そんなトップオブザクレイジーと契約してしまい、後悔しかない。
今すぐこの端末を叩き割りたいぐらいだ!
「御主が我の主か?」
別にドスの効いた声ではない。低くもないその声は非常に重く感じた。
「あ、あぁ。そうだ。お前は本物の織田ってことか?」
声が震えてないか心配だ。少しでも平静を装う為に強めな言葉にしたが、これで相手の機嫌が悪くなれば、俺は死ぬだろう。
契約で俺が主になっていても、この人は関係無いとばかりに切り殺してきそうだ。
「で、あるか。取り敢えずは及第点だの。虚勢も張れぬ者であれば殺したが……。暫くは下に付いてやろう。器があれば磨いてやる。不釣り合いであれば砕いてやるからの。邁進せぬ者に後はないぞ」
「あぁ、わかった」
怖い、超怖い。
一緒に居るだけで何回も死にそう。
そういえば、声が聞こえない。
召喚までして仕事は終わったからとかで何処かに行ったのだろうか。
ふと、端末の画面を見ると。
白い猫が目を白目にして痙攣している状態が映し出されていた。
『あばばばばば………』
声の正体は猫らしい。