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introduction
苦しそうに僕を見つめる。睨むように熱のこもった瞳で見つめてくる。凛々しい眉を険しく歪めて、無言で僕に訴える。
「あなたは僕をどうしたいのですか。」
夏の気だるい空気の中で、時間の進みがやけに遅く感じられた。あなたの頬と首につたう汗が、真っ赤な西日に反射されて血に見える。僕はいつもの癖でその汗をぬぐってやろうと、白いハンカチを持った手でそっと首に触れた。あなたは何かを言おうとして、なのに言葉を押し殺してさらに苦しそうに顔を歪めた。途端にあなたの頬に涙が伝い、気がつくと僕の目にも涙が溢れていた。泣いても尚、瞳は僕をまっすぐ見つめてくる。
「君が恐ろしい。」
絞り出された震える声に、僕は返す言葉が見つからなくて俯いた。あなたはとても悲しい顔になって、しばらく向かい合ったまま時間が過ぎた。僕はまだ涙が止まらなくて、静かに涙を零しつづけた。