グルメな彼女の裏側
和美は25歳の中堅メーカーの事務職で趣味は美味しい物を食べる事、所謂グルメだ。
容姿端麗、家事スキルと女子力はともに高く、ファションも流行は追わないもののセンスが良い。
恋人候補も引く手数多。そんな彼女にも悩みが有る。
「何で、私がまだ処女なのよ!」
「あんたのグルメに付いていけないのよ。付き合った最長が一週間だっけ。」
親友の圭子と入浴後の晩酌タイムに電話をしていた。
「失礼ね。そんなに短くないわよ。8日間よ。それと小顔ローラーをコロコロしながら喋るのは止めて。何気に煩いのよ。」
「あら、ごめん。ちょっと待ってね。はいっと、これでどう。」
カチャカチャ音はしなくなった。
「スピーカーにした。ヘッドセットにぶつかる音が嫌だったのでしょ。」
「ローラーを止めるという選択肢は無いのかい!」
思わず突っ込んでしまう。
「こっちはあんたと違って素が良いわけじゃ無いから、努力が重要なのよ。二十五は曲がり角だからケアは欠かせないわ。」
「前にSEXが1番の美容法なんて言ってたのは誰よ。」
圭子には付き合って2年の2歳年上の彼氏がいるのだ。
「なによ、こっちが気を使ったのに、そっち系に戻るの。それは今もそう思っているわよ。女性ホルモンが増えるらしいし、そうそうハグだけでも何たらミンとかが出るから幸福感や心が安定するとか良いみたいよ。」
「そうナンダ。」
ハグすらもう数ヶ月していない気がする。
「あんた最後にいつハグされた。」
「えーと、1ヶ月前位かな?」
お茶を濁す。
「本当は!」
「3ヶ月前です。スミマセン。」
ばればれだった。
「こうなったら、相手の部屋とかホテルとかですれば良いじゃ無い。」
「嫌よ、やっぱりそういう関係になるなら、結婚とまでは言わないけど長くは続きたいじゃない。」
だから手料理を先に振る舞いたいのである。
「こうなったら医者でも狙ってみたら。」
「最長記録が医者なの。キャンプ好きの人もダメだったし。」
2人のため息が被る。
「とにかく、明日彼氏が来るのでしょ。健闘を祈る。ビシッ。」
「ありがとう、頑張る。」
翌日彼氏が家にやって来た。
「あっ、うさぎ飼っているんだ。」
「うん。適当に寛いでてね。ご飯作っちゃうね。」
和美はうさぎを一羽捕まえると台所に消えていった。
うさぎ達と一緒に彼氏も震えていた。
和美の春はまだ遠いようだ。




